BTS・RMの「チームプレイ」を考察、韓国のオルタナティブな才能がソロ傑作に集った意義
San Ywan、bj wnjn、unsinkable(Balming Tiger)
まず最初に紹介すべきは、昨年のフジロック出演も記憶に新しい、オルタナティブK-POPバンドを標榜するグループ、Balming Tigerのメンバーであるこの3人だろう。Balming Tigerには多くのユニークな側面があるが、本稿で言及しておきたいのは、彼らが作曲や編曲はもちろん、MVの制作、A&Rなど、一般的なミュージシャンならレーベルや外部のクリエイターに任せる部分まで自分たちでこなしてしまうハイパーDIYなグループであること、またラップ、エレクトロニカ、パンク・ロックなど多様なジャンルをごちゃ混ぜにしながら、誰にでもシンガロングできるようなフック・センスで、新鮮なポップ・ミュージックを作っていることだ。RMとコラボした「Sexy Nukim」や彼らのキャッチーなフックが満載な「Kamehameha」「Trust Yourself」などはその一例だ。 メンバーの中でも、元々レーベル「HIGROUND」でのA&Rの経験があり、Balming Tigerでもリーダーとして、グループの作品や方向性をディレクティングしている San Yawnは『Right Place, Wrong Person』のアルバム全体のプロデューサーであり、RMの本作制作におけるパートナー的存在だ。音楽的な方向性やコラボレーションなどはもちろん、MVでもクリエイティブ・ディレクターとしてクレジットされており、音楽、映像、カバー写真など複数のアートフォーム同士を結び付けた、完成度の高い総合芸術作品を作りたかったRMのアイデアを一緒に形にし、監督する役割だったのではないかと想像する。またSan Yawn以外の2人も、プロデューサー兼ボーカルを務めるbj wnjnが「Nuts」「Domodachi(feat. Little Simz)」など3曲、同じくプロデューサー兼ボーカルのunsinkableが「Right People, Wrong Place」「out of love」など4曲の作曲・編曲にクレジットされているが、彼らがBalming Tigerで培ってきたオルタナティブなポップネスが、本作の一つのジャンル名では形容できない音楽性に寄与していそうだ。