錦織が苦手な芝を克服して全英初のベスト8を実現した3つの理由とは?
技術面で今大会の錦織を支えているのは、再発防止を主な目的として改革に取り組んできたサーブだろう。復帰後しばらくは日によりばらつきもあったが、ここに来て高値での安定感を増している。今大会、ここまでの4試合で奪ったエースは46本。これは、ゲーム数の違いこそあるものの、なんとロジャー・フェデラーに並ぶ数字だ。 その安定感を支える細かい変化の一つとして、セカンドサーブの際に、ボールパーソンからボールを受け取るようにしたことがある。これまでの錦織は、セカンドサーブ用に予備のボールをポケットに入れていたが、今大会ではそれをやめた。 「なんか変わるかなと思って試してみた」その新ルーティーンには、「一球一球、集中したいという思いが込められている」と彼は言う。 その成果もあってかファーストサーブ確率は67%と高く、サービスゲーム獲得率も89%と上々だ。 ケガで陥った苦しみの中で、錦織はサーブの抜本的な改革に取り組み、心の強さを獲得した。それら新たな武器が、これまで最も苦しんできた芝の上で実を結びつつあるのは、決して偶然ではないだろう。 その踏破してきた道の険しさを噛み締めつつ、錦織は「優勝するためには、ここからタフな戦いが続くので安心していられない」と表情を引き締めた。今や頂点をも視野に入れる錦織の、次の対戦相手として目の前に立ちはだかるのは、12連敗中のノバク・ジョコビッチ(31、セルビア)。ついにこじ開けたベスト8の扉に続き、宿敵の壁も打ち破りにいく。 (文責・内田暁/スポーツライター)