『運任せの召喚士』レビュー。もはや麻雀なのでは。ガチャすら戦略に組み込む大胆タワーディフェンス。その『オートチェス』的な確率と計算のおもしろさについて
ガチャが……ガチャが引きたい……ッ! 1パーセントの確率を制して、つええキャラを引きたい……ッ! いや、もういっそ当たらなくてもいい。とにかくガチャ、ガチャだ。ガチャが引きたい!! 【記事の画像(23枚)を見る】 そんなときはこれだ!!!! 『運任せの召喚士』だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ガチャ×タワーディフェンスで運と戦略が合体 そんな確率に踊らされる哀れな全身ガチャ人間と化した筆者を救ったのは、『運任せの召喚士』という新作スマートフォン向けアプリ(運営:エヌシージャパン)。いわゆるタワーディフェンス系のゲームで、自動で攻撃するユニットをフィールドに配置して、つぎつぎに現れる敵を撃退していく。 そして、タイトルにもあるとおりこのゲームは"運任せ"。なんとフィールドに配置するユニットはすべて"ガチャ"により配置されていく。強いやつも弱いやつも、同じコストのガチャから排出。運がよければ序盤からあらゆる敵を圧倒できる最強のユニットだって召喚できてしまう。 わかりやすいのでガチャという言葉を使っているが、ゲーム内表記では“召喚”となる。召喚に課金は不要。(左)/ゲームはふたりプレイ(オンラインでマッチングされる)。それぞれ上、下の陣地にユニットを配置し、周囲をぐるぐる回る敵を倒していく。敵の数が100体以上になるとゲームオーバー。(右) 「どゆこと?」という方のためにちょっと説明。多くのタワーディフェンスでは、ユニットを召喚するためのコストがそれぞれ設定されている。弱いやつらはコストが低く、強いやつらはコストが高い、みたいな。最初は弱いユニットで敵の攻勢をしのいでリソースを溜めつつ、「ここぞ!」というときに大量のコストを支払って強いユニットを出す、なんてのが一般的な流れだ。 だがこのゲームは違う。どんなユニットも等しくガチャより排出されるので、運さえよければ超低コストで超強いユニットが召喚できてしまう。だってガチャなので。つまりは当てたもん勝ちというわけだ。 召喚から排出されるユニットは、一般、希少、英雄、伝説という等級に分かれている。いわゆるノーマル、レア、スーパーレア……みたいなレア度だ。 英雄級以上のユニットは召喚時に特殊な演出が流れ、スマホも震える。こういう刺激がたまんねえのよ。 とはいえガチャである以上、弱いユニットだけがひたすら盤面に並ぶのを延々と見せられる……なんて悲しみを味わうこともある。 そんなときは、同じユニットを混ぜてしまえばいい。同名のユニットを3体混ぜれば、ランダムでひとつ上のレアリティに進化させられる。直接召喚するよりは3倍(3体分なので)のコストがかかるものの、ガチャで引かなくともちゃんと強いユニットを作ることが可能だ。 一般級3体は希少級1体に、希少級3体は英雄級1体になる。合成してできあがるユニットはランダムなので、そのあたりもガチャ感がある。 召喚のリソースは敵を倒すたびに溜まっていく。用途はユニットの召喚以外にもいろいろとあるのだが……その中のひとつに、ガチャから高レアのユニットが出やすくなるように召喚率自体を強化するものがある。 ガチャは引くたびに消費するリソース量がどんどん上がっていくので、できればガチャの召喚率をよくしてからたくさん引きたい。となると最低限の召喚ユニットだけで序盤は耐えて、ガチャを強くしてから一気に引いて……という動きが攻略のキモになってくる。そう、序盤は抑えながら進めて、「ここぞ!」というタイミングで一気に使って、というような。 ……お気づきだろうか。これは序盤に説明した、タワーディフェンスの基本的な流れと同じ。つまるところ、このゲームは尖っているように見えてちゃんとタワーディフェンスの王道な流れを踏襲しているのだ。 最初は英雄級以上の召喚率は1%を切っているが、強化していくと10%近くにもなる。こういう状態になってから一気にリソースを使いたいところ。 もちろんガチャ要素のおかげで、本作ならではなおもしろさもしっかりある。たとえば序盤から強いユニットを引けたなら、召喚に回す分のリソースは全部温存しておける。究極、最初に召喚した1体がめちゃめちゃに強いユニットならば、リソースは丸々温存しながら序盤をしのげてしまうわけだ。 これは先ほど例として挙げた“究極”の状況。最初の1体から伝説級のユニットが召喚できてしまったので、以降は超スムーズに召喚率などを強化できた。きもちよすぎる。 逆にまったく高レアが出ず、手持ちの弱いコマをこまごまと動かしながらリソースを節約するときもある。こういうときは、敵が飽和するギリギリを見極めながら、じわじわと戦力を投下しつつ召喚率などにリソースを割いていくような動きになる。 1プレイごとに序盤の動きが毎回違い、その違いが「いまの戦力ではどう動くのがベターか?」という思考へとつながる。ランダム性のおかげで、何度もくり返しプレイしたくなるゲームデザインになっているわけだ。 演出や音も小気味よくて気持ちいい。サクサク動いて重さを感じさせないので、リプレイ性の高い特徴にマッチしている。 この気持ちよさは麻雀やいわゆる『オートチェス』系の"確率と計算のゲーム”に近いように思う。配牌(ユニット)が悪くても、考えて考えて考えて、最後の引きで勝つ! 何を引くかは確率で決まる。自分で制御できないからこそ、運をどこまで戦術に絡めていくのかの判断がとても大事だ。言わば“どうなるかわからない不安”をエンタメとして昇華しているのである。 やっているのはタワーディフェンス系のはずなのに、脳ではまったく別ジャンルをプレイするときの部分が稼働しているような、不思議な体験だった。 特定のユニットを集めると、合成して超強い“神話級”というユニットにできたりする。麻雀的に言うなら“役を作る”という感じだろうか。 とはいえけっきょくガチャであることには変わりないため、低レアを引いたからといって山にあるユニットの総数が減ったりはしない。いわゆる"引きに行く"ような動きはできない。 ただ、逆に言えばそのおかげでカジュアルさが担保されているとも言える。ユニットを引くために面倒な確率計算をする必要はなく、いま見えている召喚率に従って行動すればいい。連続で超強いユニットを引くこともあるため、運さえよければ全部解決する場面だって豊富にある。要するに、ガチャのおかげでハードルが低いのである。 「低レアがめちゃめちゃ出てるし、そろそろ高レアが出るはず!」なんてのはガチャを引くうえではもはや当然の思考回路だが、あくまでもオカルトであることを忘れてはならない。確率は無情である。(左)/「警告は出てるけど、経験上これぐらいの一般ユニットがいればまだ耐えられるはず……」という考えで強行。これが意外と何とかなる(上の陣地にいる相方ががんばっているだけかもしれない。ありがとう!)。(右) タワーディフェンス系だの麻雀だの、ぶっちゃけ初心者にはとっつき辛そうな表現ばかりしている本稿だが、むしろ『運任せの召喚士』はまったくの逆。システムの根幹を"運"に任せているため、複雑な計算が必要ないぶん非常にとっつきやすい。 ある程度慣れてきてからは、「いまリソースを切るべきか?」のような状況判断をする楽しさも見えてくる。最初は運だけでステージをクリアーしていたところが、自身の思考も絡めつつクリアーできるようになると、途端に楽しさが倍々に。 運要素を前面に押し出すことで、ほかのタワーディフェンス系とはまったく違うプレイ感が味わえる『運任せの召喚士』。到達できたWAVE数にもよるが、1プレイの時間は5~10分ほどと短く、かなりカジュアルな遊び心地が好印象だった。もちろんしっかりとしたゲーム性や戦略性もあり、ゲーマー心もじわっとくすぐられる。 それと、もちろんゲーム内でキャラを獲得する、いわゆる(無償石とか有償石とか使って回す)ガチャもある。ただ、先行プレイ時点での役割としてはユニット強化用の素材を集めるためのものという感じで、そこまで射幸心をあおられるものではなかった。この辺りは正式サービスが始まってみないとどうにも結論が付けられるものではないものの、とりあえず現段階ではお財布に優しそうな印象を受ける。 召喚獣契約では、画面の手前からつぎつぎにちっちゃいユニットたちが歩いてくる。かわいい。 歩いてくるユニットを全部入手できるわけではなく、何体かは途中で何かに阻まれて離脱していく。一定数のユニットがたどり着くともう一度追加で引けるので、1回のガチャで意外と多くのユニットを入手できたりする。 同一のユニットが複数体集まると性能を強化できる。ガチャを回す理由はほぼこれ。(左)/ショップではユニット自体を直接的に購入可能。ガチャに頼らなくてもそんなに困らないな、というのが個人的な感想である。(右) 全体的に"どっぷりとハマる"というよりかは"じわじわだらだら続けていく"のにぴったりな、長く付き合えそうなタイトルだ。「通勤、通学の片手間に」や「作業中の息抜きに」という目的で遊ぶゲームをお探しの方は、ぜひとも一度お試しあれ。