伊藤蘭が語る、昭和のキャンディーズ時代から、令和になって変わったこと・変わらないこと コンサートは「若い方でも絶対に楽しめると思います」
「世界中が“Shining Bright”になってほしい」、新曲への強い想い
ここからは、今年8月にリリースされた初のCDシングル「風にのって~Over the Moon」について語ってもらおう。本作は、都会的なのにどこかファンタジックな要素もある、軽やかな楽曲だ。 「前年に発表した『Shibuya Sta. Drivin’ Night』(Spotify第3位)からの流れで、同じ安部純さんに書いていただきました。この歌は、澄んだ空気感がありますよね。前年にエッセイ集を出したのですが、そのタイトルを決める際、“Over the Moon”という言葉がとても素敵だと思ったんです。この言葉には、ワクワクした時に、月を超えちゃうくらい楽しい、というイメージがあるらしくて、そのいう瞬間が人生にいっぱいあるといいなと思っていたんです。だから、新曲もそのイメージでお願いしたところ、こんな素晴らしい曲を作ってくださいました」 確かに、夜の街をやわらかな風がすり抜けていくようなイメージで、聴いていると気持ちも軽くなりそうだ。 「今の世の中は、悲しいことがありすぎるくらいの状況ですが、世界中が“Shining Bright”になってほしいという願いを込めて歌いました」 カップリング曲の「大人は泣かない」も、泣いたり笑ったりする素直な感情をいつまでも大切にしよう、と明るく励ましてくれるミディアム・チューンだ。 「『大人は泣かない』は、“オトナカワイイ”って感じですよね。 ♪空の青さにも泣きそうなら 幸せなんでしょう♪ なんて歌詞にもじーんと来ちゃいます」 なお、初回出荷分に封入されている、銀色で“Ran Ito”と書かれたステッカーは、“可愛いので、スマホやパソコンに貼ってもらえたら”とのこと。
伊藤蘭のコンサートは“ファン参加型”。「若い方も安心していらしてください」
また、今年8月から来年1月までは、『伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024-2025』が全国9会場で開催される予定だ。 彼女のコンサートは毎回、伊藤蘭名義のソロ楽曲もキャンディーズ時代の楽曲も盛りだくさんだが、ソロで歌う時は女性ヴォーカルバンドのような勢いがあり、キャンディーズを歌う時は、女性コーラス2人と組んだヴォーカル・トリオのような華やかさがあり、いずれも“声が出ようが出まいが、元気でいればそれで十分”という懐メロ大会とは全く異なっている。それでいて、ファンとの距離を感じさせず、音楽を届けたいという熱意がひしひしと伝わってくるのだ。 「実は、キャンディーズの頃から、私たちのステージはバンドメンバーのみなさんと作り上げるというスタイルを確立していて、今も、バンドあっての伊藤蘭だと思って続けているんです。もう、そういうカラダになっちゃった(笑)! やっぱり、ステージは“生もの”だと思うんです。もちろん、お客さまと距離を取ってショーアップするスタイルも、とっても素敵ですよね。でも私の場合は、ファンのみなさんとの一体感を大切にしたいんです。 そして、キャンディーズの曲は、二声や三声でハモるというコーラスワークありきなので、コーラスのお二人に助けていただいて、なるべく当時の形に近いものを再現するようにしています」 そういった彼女の気持ちが伝わっているのか、観客も大人しく聴いているというより、掛け声や手拍子にも積極的な方が多いように感じた。 「確かにそうですね。ソロ・デビューしたばかりの’19年の頃は、みなさん、“どう応援すればいいんだろう、静かなのがいいのか…”と、戸惑いもあったと思うんです。そこから徐々に盛り上げてくださって、今ではすっかり“ファン参加型”のコンサートになっていますね!」 今回のツアーの内容を、ネタバレのない範囲で尋ねてみると、 「見どころとしては、今年5月29日に、1日限りのコンサートでも初の試みとして披露した『やさしい悪魔』と『アン・ドゥ・トロワ』のニュー・アレンジですね。その日、多くの方に喜んでいただけた感触があったので、今回のツアーでも披露しようと。そして、新曲の2曲も歌いますし、他にもこれまであまり歌ってこなかったキャンディーズの楽曲をプラスして、濃厚な構成になっています。もちろん、伊藤蘭の楽曲もたっぷり聴いていただけます(笑)」 とのこと。最後に、キャンディーズや伊藤蘭さんの作品を聴いている方へのメッセージもお願いしてみた。 「キャンディーズの楽曲がサブスクで解禁される(’19年4月24日~配信開始)というお知らせが届いた時、私は“何のこと? ?”って、まったく意味が分からなかったんです。きっと、今もCDで聴いてくださっているファンの方にとっては、“なじみのない作業があるのでは?”と不安かもしれませんね。でも、私がそうであったように、一度覚えてしまえば、手軽にあらゆるジャンルの曲が聴けて、音楽をより身近に感じることができると思うので、長年のファンの方でも、意外な発見があるかもしれませんね。 そして、若い方は、ひと昔前なら簡単には手に入らなかった音楽がすぐ聴けちゃう、もっとも幸せな時代に生きてらっしゃるので、親御さんや祖父母世代の曲も気軽に聴いてみてください。そして私のコンサートにも、是非是非いらしてください。絶対に楽しめると思いますよ! お父さんのようなファンの方たちが温かく迎えてくださると思うので、一人でも安心していらしてくださいね(笑)」 昭和のキャンディーズ、令和の伊藤蘭としての活動で一貫しているのは、ファンやスタッフ、バンドのメンバーとともに歌を大事にしていたい、という想いだ。そうやって音楽に根差したアイドルだったからこそ、キャンディーズは現代でも愛されている楽曲が多く、また伊藤蘭自身も、今なお新たなJ-POPに挑んでいるのだろう。かといって、奇をてらって飛び道具に頼ることもなく、あくまでも明るく楽しく音楽を届けるというスタイル。伊藤蘭のように、ひたむきに唯一無二の存在であり続ける人は、エンタメ分野に限らず、今後ますます求められていきそうな気がする。 *** 全3回でお送りした伊藤蘭さんインタビュー。第1回ではキャンディーズ時代の人気曲を、第2回では隠れた名曲とソロ名義の人気曲について語ってくれた。