聞こえてこないサインツJr.のフェラーリとの契約更新の知らせ。その背景を考察する
ルクレールとのコンビ
フェラーリから見れば、サインツJr.がチーム残留に足る存在かどうかを疑問視する理由はほとんど無い。 マラネロで過ごした過去3シーズンでのサインツJr.のパフォーマンスは上々で、ルクレールとのコンビは、チームを後押しする最も完璧なコンビのひとつとなっている。 ルクレールには予選やバトルで際立つ天賦の才がある。一方でサインツJr.は優れたノウハウと技術的な感性を備えた完璧なプロフェッショナルであり、エンジニアにとって非常に有益な資質を持っている。 ふたりのドライバーの差はわずかなモノだが、チームの総合力を引き上げる上でお互いを補完し合っている。競争力のあるペアを継続的に起用できることは、F1チームにとってコース内外で有用だ。 しかしフェラーリとサインツJr.の代理人との交渉が予想以上に長引いている事実に変わりはない。そして交渉の進展が何も聞こえてこないことで、実際に何が起こっているのかと憶測を呼ぶこととなっている。 しかし明らかなのは、昨年唯一レッドブルに土をつけたサインツJr.が前回よりもはるかに有利な条件で交渉できる立場にあるということだ。 フェラーリは2022年の4月21日にサインツJr.と2年契約を結ぶことを発表した。当時はルクレールが開幕から3レースで2勝と2位表彰台、サインツJr.がバーレーンGPで2位、サウジアラビアGPで3位を獲得していた。 そこから時を経て、サインツJr.は金銭面だけでなく、契約期間など他の契約内容も含めて、より良い条件を見据えている可能性が高い。 またフェラーリは、ルクレールとの契約更新発表の際にその期間を明かしていないが、それはチームの長期戦略を理解する上で重要なデータであり、ほぼ間違いなく偶然ではない。 仮説通り、ルクレールとフェラーリの契約が2027年末までの3シーズン(2025年~2026年+1年のオプション)だとすれば、フェラーリがルクレールをチームの未来を築く上で重要な柱と見なしていることがまたひとつ裏付けられたこととなる。 このようなシナリオでは、サインツJr.の役どころは難しくなる。現在フェラーリがNo.1ドライバーとNo.2ドライバーを明確に別けているとの指摘はないが、商業パートナーやメディア露出なども含め、チームがどちらかのドライバーに傾く要素は他にもある。 とはいえ、チームを味方につける上で勝利は非常に重要だ。それは昨年のシンガポールGPを制したことでサインツJr.を中心にチームが団結したことからも明らかだった。 結局のところ、2025年から2026年にかけて、フェラーリはサインツJr.が最良の選択肢であると分かっており、同様にサインツJr.もチームに残ることが彼のキャリアにおいて最良の選択肢であると分かっているはずだ。 しかし交渉が長引くにつれて、契約をまとめるために両者が妥協を強いられることになるかもしれない。