「人生詰んでる」女子のヤバい課外活動、男子バレー髙橋藍大推薦の青春部活小説、眩しすぎる修学旅行の「ある一日」。令和の高校生が主人公、「Z世代」を体感する傑作小説6選(後編)
膨大なカルチャー情報サンプリング、「万事休す」なのに、なぜだか愉快!
ままならない日常を一足飛び、二足飛びで振り切るかのように、3人は校舎の屋上にあるビニールハウスで大麻を育て、ビジネスを始めることに。そして物語は急加速、卒業式の日に繰り広げられるクライマックスへと爆走していきます。 ――と、ここまで物語を紹介すると、よくある「ヤバめで治安悪そうな犯罪小説」と思われがちですが、本書はそれだけではありません。 3人はそれぞれに膨大な古今東西の文学、映画、音楽などのカルチャーを愛していて、会話のはしばしに膨大なサンプリングがちりばめられています。たとえば、こんなアーティストや作品名が。 バスタ・ライムズ、パブリック・エネミー、たま、ドアーズ、ジョイ・ディヴィジョン、中島みゆき、ニルヴァーナ、ビリー・アイリッシュ、ヴィヴァルディ、ワーグナー、『綿の国星』、『時計じかけのオレンジ』『悪魔のいけにえ』、『アンチクライスト』、『ブルー・ベルベット』、『ドラッグストア・カウボーイ』、『レイジング・ブル』、『ゆきゆきて、神軍』、『リバース・エッジ』『ユービック』『 銀河ヒッチハイク・ガイド』『コインロッカー・ベイビーズ』『侍女の物語』、フランシス・ベーコン、「芝浜」、そしてジャン=リュック・ゴダール――。 人類がこれまで作り上げてきた文化的な営みへの、深遠なるリスペクトの表明。デッドエンドにいる3人は、過去との連なりの中で自らを救う欠片を見つけ、そこから力を得て「今」を生き抜こうとしています。そしてその姿はなぜか、この物語に「ヤバい」だけでない、カラッとした心地よい風を吹かせているのです。 「おもしろかった。タイトルが秀逸。『八方ふさがり』とか『万事休す』といったような状況なのに、この愉快さ。もちろん、ラストには大麻の煙が充満しているのだから、快調以外の何物でもないのだ」(松本清張賞の選考委員の1人、中島京子さんの選評より) 破滅的なのにこの上なく爽快。ちなみに今、書店では若手営業部員が考えた新しい帯が巻かれています。 「読んでみな、トぶぞ!」
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