ハマス指導者殺害、なぜ起きたのか-イランの深刻な欠陥を露呈
(ブルームバーグ): イスラム組織ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がテヘランで死亡した事件は、自国や同盟国の要人を守るイランの能力に疑問を投げ掛けた。この事件にイランがどう反応するつもりなのかは不透明だ。
ハニヤ氏はイランのペゼシュキアン大統領の就任式に出席するためテヘランを訪問していた。ハマスが31日発表したところによると、ハニヤ氏は滞在していた宿泊施設で夜間にイスラエルの攻撃に遭い、死亡した。
その数時間前にイスラエルはレバノンで親イラン民兵組織ヒズボラの司令官を殺害したと発表。さらに数カ月前には、シリアでイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)司令官らが空爆を受けて死亡。イランはイスラエルによる空爆だと非難した。
ハニヤ氏殺害がイラン国内で起き、その数時間前に同氏がイラン国営テレビ局でペゼシュキアン大統領を称賛していたことを踏まえると、今回の暗殺はイラン情報機関と最高指導者のハメネイ師、IRGCにとって大失態と言える。
ハメネイ氏は国営テレビで読み上げられた声明で、ハニヤ氏を迎えていた国としてイランは「復讐を求める義務」があると主張。イスラエルの「人殺しでテロリストのシオニスト体制」は「厳しい処罰」を覚悟するべきだと続けた。イスラエルは今のところハニヤ氏殺害の責任を認めていない。
イランはパレスチナ自治区ガザでイスラエルと戦うハマスの主要支援国だ。ハマスはレバノンのヒズボラ、イエメンの武装組織フーシ派、パレスチナのイスラム聖戦とともに、米国とイスラエルの利益に抵抗する枢軸を形成している。いずれのグループも程度の差はあれ、イスラエルとの紛争に関与している。
イランの情報および安全保障担当の最高幹部は、次の一手を判断しようとするだろう。全面戦争を避ける慎重な対応を再び取るのか、ハニヤ氏殺害が一線を越えたとして域内でのイメージ回復だと判断するのか、決断を迫られる。
イランの国連代表部は、報復が「特殊作戦」の形を取るとX(旧ツイッター)に投稿し、限定的な対応を示唆した。過去の報復措置では、イスラエルや米軍基地へのミサイル攻撃をイランは行った。