飼い主に見捨てられ、象のような皮膚をかきむしっていた柴犬が”笑顔”になった瞬間
検査でしこりが発見され
表情がなかったふうちゃんが、やがて笑顔を見せるようになる。 「心身ともにすっかり回復して預かりさんのところでも毎日、のんびり暮らしていたのですが、その後の検査で両脇にしこりがあることが判明します。 すぐに病院に連れて行き、手術で除去しました。病理検査を行ったところ、幸い陰性でほっと胸をなでおろしました」 現在、ふうちゃんは、里親さんのところでご機嫌に暮らしている。ふたりの預かりさんの家を経たのち、預かりさんのひとりが、里親さんに立候補してくれたのだ。 「PR会社でリモートワークが中心の里親さんは、日々忙しく働いていますが、料理上手な方で、預かり時からフードと併用した手作り食やアレルギーに配慮した自家製ちゅ~るを作ってくれるなど、ふうちゃんのきめ細やかな食餌のケアをしてくれています。 動物の気持ちを汲むのも上手なので、彼女の家に行ってから、ふうちゃんは本来の性格がどんどん出てきました。そして、『今日から本当のうちの仔だよ』と言ったわけでもないのに、預かりさんが里親さんになると決めた途端、ふうちゃんに『うちの仔』意識が見られるようになったのです。 本当に不思議なのですが、今でもワタデキのメンバーと話題になるくらい、その変化は印象的でした。ひとり暮しの里親さんが『犬を飼う。自分が一生ふうを守る』と決めた覚悟がふうちゃんにも伝わったのだと思います。 ふうちゃんは、“うちの仔”になってから、さらに表情が豊かになりました。感情が表情に出るようになり、いたずらもするようになったそうです。」 「一時預かりの場所なのか、自分がその家の仔になったのか──。私は、動物はわかるのだと思います。保護っ仔たちは、自分たちの置かれている立場をきちんと理解していると思うのです。ちゃんと人間の空気も読みます。 それに、私がセンターから引き出して、その後、すぐに預かりさん宅に託した仔や里親さんへとつないだ仔も、ちゃんと私のことを覚えてくれているんです。動物って、人間が考えるよりもずっといろいろなことを感じているものです。立ち位置を汲み取ったり、周りにいる人間をよく観察している。不安な気持ちや寂しさ、うれしい気持ちや安心感など、シンプルな感情だけにとても純粋です。そこが大きな魅力なのかもしれませんね」
坂上 知枝、長谷川 あや