清水エスパルスの北川航也　撮影：中地拓也

　清水エスパルスに勝利をもたらしたのはやはり、キャプテンにしてエースストライカーの一撃だった。 ■【動画】「超綺麗」「これは鳥肌もの」と話題の、J2清水の勝利後にスタジアムが暗転して現れた光景■ 　藤枝MYFCの前線目がけたロングボールをDF高橋祐治が跳ね返したセカンドボールを拾ってからの素早い展開で、左ウイングバックの山原怜音から前でフリーになった乾貴士に縦パスが出ると、交代出場のドウグラス・タヌキが斜め左に走ってディフェンスを引き付ける。右外で乾からパスを受けた北川航也が、狙い澄ました一撃を見舞った。 「怜音が後に下げず、前に付けたことで始まったと思うし、そこが全てだと思います。そこに走り込んでいるのが自分の良さ。ボールが来る時は多少、時間もあって、いろいろなことを考えながらでしたけど、いいところにとボールが止まったので。あとはキーパーを見て流すことができました」 　ロングボールが入ったら、必ずセカンドボールを拾うというのが藤枝戦のテーマだったという。そこで回収できた時に、3ー4ー2ー1の藤枝は左右のウイングバックが高い位置を取るので、清水のアタッカー陣がワイドでフリーになりやすい。北川は「そこの裏を取れるというのはスカウティングにもあったし、あとは貴士くんの良いボールでコントロールが決まったかなと思います」とシーンを振り返る。

■「2試合の反省を少なからず生かせ」

　この日は清水も3ー4ー2ー1で入ったが、その狙いの1つとしてはミラーゲームになることで、目の前の相手に負けないことが、自分たちにアドバンテージになってくる。秋葉監督は「われわれらしくなく、インテンシティーの部分で後手を踏むゲームが横浜FC戦、山口戦と直近で二度もありました、もう一度われわれらしさを取り戻す、発揮するには3バックがベターだと思い、採用しました」と理由を説明する。 　1対1のマッチアップが多くなるシステムのぶつかり合いで、目の前の相手とのバトルに勝つということを前提にしながら、藤枝の可変的な動かしにもうまく対応しながら、セカンドボールを自分たちが回収して、そこから逆に縦向きの鋭い攻撃で、相手のディフェンスを仕留め切る。そうした清水の狙いが象徴的に出たゴールだった。北川は「全員の意識の問題で、こういった戦いができると思う」と語る。 「藤枝も藤枝で、高いモチベーションで来てたと思うし、清水に勝ってやろうという気持ちできた中で、こうして……苦しい試合ではありましたけど、アウェー2試合の反省を少なからず生かせたと思うので。これをスタンダードにしつつ、もっと得点が取れるようにやっていきたい」 　決勝点となったゴール後、誕生したばかりの愛娘に向けて、仲間と共にゆりかごダンスを披露したエースは難しいゲームの勝利を噛み締めながら、ここから続く戦いに向けて気持ちを引き締めた。 （取材・文/河治良幸） （後編へ続く）