「元気なうちは自由に自立して暮らしたい」思いを実現 高齢者向けの賃貸アパート さいたま市の「あかつき館明花」
多くの高齢者が願う「元気なうちは自由に自立して暮らしたい」―。そんな思いが実現する高齢者向け賃貸アパートが埼玉県さいたま市にある。市内で不動産会社経営者が私財を投じて、設計や建設、運営を担う。動画配信など交流サイト(SNS)による情報発信や入居者による口コミなどで徐々に知られる存在になり、現在では同市西区と南区の計2棟に60~90代の計28人が入居する。今後も市内や川口市に建設を計画し、元気なお年寄りの「住」を応援していくという。どのような建物なのか見学してみた。 「あかつき館明花」の外観など【写真2枚】
■私財を投じて 訪れたのは、南区の「あかつき館明花」。区内にある不動産会社「バックアップ」の碇亮会長(76)が一般財団法人「あかつき会」(浦和区)を発足させ、運営している。 JR浦和駅東口からバスで約15分。最寄りのバス停から、市立病院に直行もできる立地だ。2023年1月に完成し、木造3階建て計15戸。総工費約1億8千万円は碇会長が私財を投じた。 共有スペースでは入居者約10人がお茶を飲みながら歓談。介護保険で受けられるサービスを利用し、支援してもらいながら自立した生活を送っている人がほとんどだ。 「自分のことは自分でできる環境が整っていて、快適で暮らしやすい」(70代男性)「一人で一軒家に住むより同じ年代の方々と会話もできて生活が楽しい」(70代女性)と満足げ。碇会長も「皆さん、入居時と今とでは顔の表情が違う。笑顔が増え、健康的になった」と住環境の良さに太鼓判を押す。 ■欄間窓の明かりから
館内には高齢者が住みやすい工夫が施されている。1人用は約10畳、2人用は約15畳のワンルームで、ベッドやIHキッチン、トイレが備わり、プライベートを確保。各階には共用の浴室(計5室)や洗濯機(計5台)を設置。浴室のドアには部屋番号の札を下げるのが決まり。体調不良で浴室から出てこない人がいても気付くよう配慮されている。浴室の清掃は外部に委託し、いつでも清潔な空間が保たれている。各玄関の欄間窓からの明かりによって住人の安否も確認できるという。 外庭には畑や憩いの空間が広がる。トマトやリンゴなど野菜や果物を育てたり収穫を楽しむことができ、住人同士の交流の場にもなっている。 家賃は年金で生活できるよう、月5万5千円と定額の管理費1万3千円のほか、各自の電気代などに抑えている。あかつき館は公的な特別養護老人ホームや民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅と違い、自立型民間アパートのため、自炊など食費は自己負担だ。