ザック采配の納得のいかない疑問
これまで何度も選手たちへの厚い信頼を口にしてきたというのに、4年間の集大成となるここに来て、なぜ、最後までイレブン を信用しないのか。ザッケローニ監督のことだ。「日本のスタイルを貫いて、世界に勝つ」という野心とともに臨んだ今大会。コートジボワールとの初戦に続き、ギリシャ戦でも、試合終盤にパワープレーの指示が出た。
パワープレーが日本の選手たちに合っていないのは、ザッケローニ監督自身がこの4年間で学んできたはずだ。 「日本には空中戦のサッカー文化はない。(就任後から視察した)232試合で、それほど多く空中戦を見た記憶はない」。だから、194センチのハーフナー・マイクも、185センチの豊田陽平も、W杯のメンバーから外したはずだった。それなのに、なぜ……。まだ3人目の交代枠が残っているというのに、センターバックの吉田麻也を前線へと上げた。 長身揃いのギリシャに対し、単純に放り込んでも勝ち目はないと、ひと工夫入れようと試みる選手たちに対し、ピッチサイドで「早く放り込め」と促す指揮官。10分近くに渡った放り込みは、ゴールへの可能性を感じさせなかった。後半から遠藤保仁を送り出し、67分には満を持して香川真司も投入。遠藤は右に、左に流れて起点となってボールを散らし、長友や内田の攻撃参加を促した。香川はときおりドリブルで仕掛けながら、ギリシャDFの壁に穴を開けようとした。内田篤人はグラウンダーの鋭いクロスを流し込み、大久保嘉人はゴール前に飛び出した。 たしかに高温多湿なナタルの気候が選手たちの足を鈍らせ、本田圭佑も決定的な場面に絡めていなかった。「決定的」というチャンスは少なかったかもしれない。それでも焦れずに、何度も何度も揺さぶって、スペースやマークのズレを生み出そうとしていた。残り10分、これまでの試みがボディブローのようにギリシャのDF陣に利いてくる時間帯。しかし、肝心の指揮官には、最後までスタイルを貫き続ける覚悟と忍耐がなかった。 パワープレーが不発に終わったのは結果論でもある。ただし、日本の強みやスタイルを捨て、自ら否定した戦い方を2試合続けて土壇場で採用したのは事実。チームに与える影響は小さくないだろう。交代枠は1枚残っていたわけで、柿谷曜一朗や齋藤学、青山敏弘、清武弘嗣らはなんのために選出されたのか。ハーフナーや豊田はなぜ、選出されなかったのか。