G20前に動き出した米朝関係 北朝鮮の元駐英公使が語る金正恩の狙いと本音
金正恩体制の崩壊は早くても10年先か
金正恩体制の崩壊に関しては、少なくともあと10年はないだろうとの見解を示した太氏は、その理由として軍内部の金委員長に対する忠誠心が世代によって大きく異なるからであるとの見方を示した。金正恩の祖父である金日成によって唱えられた「主体(チュチェ)思想」を崇拝していた世代が現在も軍の要職に就いているが、その多くは60代から80代で、彼らは絶対的な忠誠心を示すことによって相応の恩恵を受けている。しかし、若い世代はそういったイデオロギーを冷めた目で見ていると太氏は語る。 「北朝鮮の軍部を掌握する高齢の将軍らがみな年齢的な問題で退役し、30代から50代までの若い幹部将校らが力を握った時が金正恩体制の崩壊の始まりになるだろう。若い幹部将校らは思想的に金正恩と共有できるものがない。体制崩壊は時間だけが解決できる」 北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、金正恩委員長がトランプ米大統領から親書を受け取り、親書に目を通した金委員長が内容に満足したと報じた。11日にはトランプ大統領が金委員長から書簡を受け取ったことを明らかにし(書簡が送られたのはシンガポール会談から1年を迎える直前の10日)、「素晴らしい手紙だった」と感想を語っていた。ポンペオ米国務長官は23日、トランプ大統領が金委員長に送った親書について言及。米朝間における協議再開を期待するとコメントしている。 28日から大阪で行われるG20サミットで、中国の習主席は米朝関係においてどのような影響を与えるのだろうか。サミット後に米朝間の協議が再開される機運が一気に高まり始めたが、非核化や追加制裁の有無に関して、今後どのような展開を見せるのかは不透明なままだ。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う