一般道120キロ爆走で女児死亡させた医師に「執行猶予」、なぜ高級スポーツカーの運転手に“大甘判決”がまかり通る
「広島の事故は外国車の大幅なスピード超過による右直事故ということですが、実は、私の弟が死亡した事故と類似しています。そもそも、皆さんは一般道で時速100キロを超える車が走ってくると考えて右折していますか? ブレーキが間に合わなくてぶつかったことも、車内の人間が外に放り出されたことも、すべて120キロものスピードが原因なのです」 ■ 警察は「危険運転致死罪」で送検したのに… 捜査にあたった警察は男を危険運転致死罪で送検した。ところが、検察はそれよりも軽い過失運転致死の罪で起訴。その理由は、「被告は直線道路をまっすぐに走行しており、危険運転致死罪と認定し得る証拠がなかった」というものだった。 長さんら遺族はこの判断にどうしても納得できず、悩んだ末に、再捜査を求めて署名活動を行い、検察庁へ要望書を提出するなど活動を開始。その結果、2022年12月、大分地検はより罪の重い「危険運転致死罪」へ、極めて異例といえる訴因変更をおこなったのだ。 しかし、裁判は遅々として進んでいない。事故から3年と4カ月が過ぎた今も、公判前整理手続きに時間がかかっているらしく、公判日程は未定だという。 長さんは語る。 「このような高速度を、もし『制御できている運転』とみなすならば、それは故意による殺人と同じです。制御できているのにぶつかるんですから。このような“快楽”を伴うスピード超過は、『過失』ではなく、『未必の故意』と捉えるべきではないでしょうか。私は危険運転の法律がおかしいのではなく、先例により、危険運転で起訴できるはずの事件の条文解釈の幅がどんどん縮小化されていると感じています」 広島の事故では、加害者が日弁連に100万円の「交通贖罪寄付」* を行ったと報じられているが、こうした行為についても長さんは懸念を抱いているという。 (*交通贖罪寄付とは、交通違反や交通事故を起こした方々が、寄付を行うことで反省悔悟を示すことができるというものです。飲酒運転やスピード違反など、具体的な被害者がいない場合において、特に有効な情状立証手段となるものと思われます[日弁連交通事項相談センターHPより]) 「お金さえあれば罪が軽くなる、という先例も作ってしまったのではないかと危惧します。正義とは、いったいどこにあるのか……。私は今、同様の事故の遺族とともに『高速暴走・危険運転被害者の会』を立ち上げ、活動を行っています。広島のご遺族とも、よろしければぜひつながっていければと思っています」