【NBA】契約延長を巡って不協和音、キングスのディアロン・フォックスは『ワガママなスーパースター』を抜け出せるか
「優勝を狙えるチームでプレーしたい」にファンは反感
キングスはまずまずの開幕スタートを切ったはずが、この1カ月は5勝11敗と失速し、ここまで13勝17敗で西カンファレンス12位に沈んでいる。ディアロン・フォックスとデマー・デローザンというリーグ屈指のクラッチプレーヤー2人を並べることで、接戦の終盤には止められないオフェンス力を持つはずだったが、物事は期待通りに運んでいない。 そして、チームからは不協和音が漏れ出した。その発生源は残念なことに『チームの顔』であるフォックスだ。キングス一筋8年目の27歳は、来シーズンいっぱいで5年1億6300万ドル(約240億円)の契約満了を迎える。キングスは開幕前の10月に3年1億6500万ドル(約240億円)の新契約をオファーしたが、フォックスはこれを断った。 今シーズン終了まで待ってオールNBAに選出されていれば4年2億2900万ドル(約340億円)ないしは5年3億4500万ドル(約520億円)の契約を得られる可能性があるのだから、このタイミングで契約を固辞するのは理解できる。しかし、ドレイモンド・グリーンのポッドキャスト番組に出演した際の発言が、事態を複雑にしている。 「優勝を狙えるチームでプレーしたい。それが最終的な僕の望みだ。僕にとって重要なのは、毎年着実に成長していると感じられ、優勝争いができるかどうかだ。それさえクリアになれば、僕はすぐにサインする。僕はこの街が、このチームが大好きだ。ここでプレーし続け、ここで引退したいと思っている」 だが、この発言はファンの反感を招いた。フォックスが1巡目5位指名を受けた2017年以来、キングスはフォックスを生かすためのチーム作りを続けてきた。ドマンタス・サボニスを獲得し、キーガン・マレーを指名し、シックスマンのマリーク・モンクを慰留して、指揮官マイク・ブラウンはペースの速いオフェンシブなバスケ、つまりフォックスの得点能力を最大限に引き出すスタイルを志向している。 キングスが優勝争いのできるチームでないのだとしたら、それはフォックスにも責任がある。彼中心のチーム作りを採用するフロントに明らかな過失がない以上、あとは彼らがコート上で成果を勝ち取らなければならない。 マイク・ブラウンは常にフォックスをチームの中心に据えているが、甘やかしはしない。フォックスのことを「スーパースターになる一歩手前の選手」と定義し、ステップアップを求めている。「高いレベルで勝利を収める選手をスーパースターと言うのであれば、フォックスはその位置まで行く責任がある。そして私は彼をそこまで引き上げなければならないプレッシャーがある」と指揮官は言う。 フォックスは昨シーズンのオールスターに選ばれ、オールNBAサードチームにも選出されており、今のNBAでその立ち位置の選手は自分の思いのままに振る舞う『権利』を半ば公然のように持っている。ただ、サラリーキャップの縛りが厳しくなる今、チームを勝たせないまま巨額契約を要求するスター選手のワガママが通用するかどうかは怪しいものだ。 個人タイトルだけでスーパースターとして振る舞うのか、チームを勝たせる責任を全うするのか。フォックスは今こそ精神的にステップアップすべきだろう。