“汚れ役”を買って出る優勝請負人…40歳の菊地祥平がA東京で体現すること
9回目の開幕を迎えたBリーグにおいて、唯一、連覇を達成しているのがアルバルク東京だ。しかし、2019年にトロフィーを掲げて以来、優勝どころかファイナルにまでコマを進められていない。 そんなクラブに頼もしい男が帰ってきた。2021-22シーズンを最後に越谷アルファーズに移籍した菊地祥平だ。連覇の味を知る菊地が3シーズンぶりに復帰した。 10月5日のシーズン開幕戦を終えたあと、最後までコートに残って個人練習を行っていた菊地。吹き出す汗を拭きながら、今年の8月に40歳を迎えたベテランがメディア対応を行った。 「この年齢でアルバルクに帰ってこられるとは思っていませんでした。僕のためにロスターを1枠開けてくれたのはありがたい話です。まずは(伊藤大司)GMや(デイニアス・アドマイティス)ヘッドコーチの信頼を得られるように。そして、自分の役割を全うできるように頑張りたいです。シーズン中はどうしても好不調の波があります。その波の高低差を少しでも少なくできればいいなと思っています」 第4クォーターに出番がやってきた。菊地がコートに立つと、そのときを待ちわびていたかのように、国立競技場代々木第一体育館に詰めかけたファンから大きな歓声と拍手が湧き上がった。 「本当に帰ってきたんだなと、温かく迎えていただきました。対戦相手が昨シーズンまでお世話になっていた越谷であっても緊張はしませんでしたが、楽しみのほうが強かったですね。ただ、明日負けたら意味がないので、しっかり勝ちに行きたいと思います」 温かく迎え入れたのはファンだけではないようだ。 「例えば岡本(飛竜)だっかり、福澤(晃平)だったり、僕が彼らの立場だったら、こんなベテランがいきなりチームに入ってきたら『えっ』って思うんじゃないかなと。それを(安藤)周人やザック(バランスキー)、小酒部(泰暉)たちが受け入れやすい雰囲気を作ってくれて。コミュニケーションをとても取りやすいので、僕から色々と話かけたりとかできるので、ありがたいなと思っています」 昨シーズンのCSクォーターファイナル第3戦、菊地は有明コロシアムにいた。「ライアン(ロシター)のあのシュートが入っていたらきっと優勝まで突っ走ったと思っています。ただ、そのシュートは入らなかった。あのシュートはライアンが打ったけど、チーム全員のシュートでもあります。ベンチに含めてあの1本を決めさせるためのアプローチが絶対にあるんです。そのシュートの重みをチームには伝えなければいけないし、シーズンを通して浸透させなければいけないと思っています」と力を込めた 「アルバルクの選手はスマートというか、優等生がそろっている感じがします」と問うと、「それを僕も思っています」と食い気味に答えが返ってきた。 「ずる賢さでしょうか。それがあればあの琉球戦にも勝てていたと思います。ただあの試合、ファウルかどうかギリギリのプレーをしてきた。それに対してフラストレーションを溜めても仕方ないこと。バスケIQや運動能力が高い選手がそろっていても、それだけでは勝てないときにずる賢さとか、相手選手だけでなくレフェリーとの駆け引きも必要になることがあります。それを練習中から伝えていきたい」 さらに「まさに汚れ役ですね?」と聞くと… 「優勝できるなら何でもやりますよ。そして、それを伝えます。なりふり構わずというか、それで優勝フラッグが増えるのなら。そのために帰ってきました。喜んで買って出ますよ」 勝利への執念、優勝への渇望を言語化し、それを体現できるのが菊地の強みだ。優勝請負人、リーグ制覇へのラストピースがどのようなパフォーマンスを見せてくれるか。菊地本人は今シーズンを楽しみにしているが、それはファンにとっても同様のはずだ。 文=入江美紀雄
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