期待集まる「介護ロボット」 深刻な現場の人材不足と腰痛増加
THE PAGE
介護の厳しい労働や待遇の改善はロボットで――。長野市で11日開いた「介護の日・県民のつどい」で、介護ロボットが福祉関係者らの関心を集め、「介護施設の労働環境などの改善に将来必ず役立つときが来る」と、期待の声も出ていました。ロボットはまだ高価で、広範に普及するめどはありませんが、腰痛などの労災や低賃金による離職が深刻な福祉の現場にどう生かすかが課題になってきました。
■職員の腰痛が約3倍に増加
つどいは長野県社会福祉士会、同介護福祉士会、同社会福祉協議会など県内の福祉関係9団体の主催。市民や福祉施設職員、福祉関係の専門学校生らが福祉機器の展示や介助の実演指導なども見学しました。 主要テーマの「介護ロボットのデモンストレーション」では、メーカーやアプリ会社など3社が実演を交えて紹介。介護時の腰の負担を抑える装着型ロボットのメーカーは「主電源を入れれば、あとのスイッチは皆さんの体です。介助者の体が動きだすときの脳から筋肉への信号を読み取って、腰に取り付けたロボットが補助する仕組みです」と説明。将来、福祉の現場を目指す専門学校生らの関心を集めていました。 装着型のロボットを開発した背景について担当者は、(1)福祉現場の腰痛の増加(2)介護施設の6割以上がロボットの導入を検討している――などを挙げました。また今後、ロボットの価格やメンテナンスの負担の在り方などが課題になるとしました。 厚労省によると昨年度までの10年間に福祉施設などで発生した業務上疾病の腰痛は2.7倍に増加。一方、同省によると2025年には介護職員が全国で38万人不足すると推計され、福祉現場の人手不足は深刻。職員の負担も増すため、ロボットの導入は現実味を帯び始めています。
■レクリエーションを代行
ソフトバンク社の感情認識ロボット「ペッパー」のアプリを開発している企業は「福祉施設で利用者との交流に活用したところ、利用者に笑顔が戻りました」と説明。人間とコミュニケーションできるロボットが利用者の生活に潤いをもたらす効果があるとしました。 加えて、15分から30分かかる利用者のレクリエーションをロボットが代行してくれるため、その間職員がほかの業務に当たることができるという「省力化」の効果も出ています。「ロボットの導入でレクリエーションの業務負担が20%減った」という例も紹介されました。 会場でロボットのペッパーを紹介していたソフトバンクの担当者は、「すでに1000数百台が法人の案内業務などで活用されており、福祉分野への利用拡大も進むでしょう」と話していました。