ちゃんみな×SKY-HI『No No Girls』が“否定”する価値観 初回放送で明らかになったプロデュースの姿勢
音楽シーンでは近年も、新人グループの活躍が顕著である。しかし、夢を追いかけてオーディションに挑み続ける中で、世間から才能や容姿、年齢、時には夢に対する「No」を突きつけられ、一生ものの傷を負う人が少なくないのも事実だ。ラッパー・アーティストのちゃんみなもその一人だった。そして今、「No」を打ち破ろうとする個が集い、かつてない新たなガールズグループが誕生しようとしている。それが、ちゃんみながBMSGとタッグを組み、初めてプロデューサーを務めるガールズグループオーディションプロジェクト『No No Girls』だ。 【画像】ちゃんみな×SKY-HIが賞賛した国民的オーディション参加経験のある参加者 ちゃんみなは今回のプロジェクトの募集開始にあたり、「現代は自分で自分に『No』をつきつけてしまっている子が多いと思います」「彼女たちと同じように『頑張っている人』にぜひ届いてほしい」とコメントし、まだ見ぬ原石たちに対して「身長、体重、年齢はいりません。ただ、あなたの声と人生を見せてください」と呼びかけた。なぜならば、彼女自身もかつてガールズグループアーティストを目指していた際に大人に「No」を突きつけられ、苦しみ、もがいてきた1人だからだ(※1)。 BMSGの公式YouTubeチャンネルでは、10月4日から本プロジェクトの模様を追った本編が毎週金曜日20時に配信されている(完全版は10月6日にHuluにて配信スタート)。そこでちゃんみなは「人格、性格、どういうことを経験してきたのかは、表情や声に出る」「その人の人生が声に乗っていればいい」と語る。それが、『No No Girls』の理念である。 今回、彼女はアーティストに求める3つの「No」――「No FAKE -本物であれ-」、「No LAZE -誰よりも一生懸命であれ-」、「No HATE -自分に中指を立てるな-」を提示した。「No FAKE -本物であれ-」は、自分の経験や視点から見えるもの、本当に感じたものや事実を伝える自己表現上の指針。「No LAZE -誰よりも一生懸命であれ-」は、自分と向き合うことを怠らないでほしいということだ。実際、本プロジェクトを共催するBMSG CEOのSKY-HIも、この点について「自己理解を深めた人にしか出せない『声』がある」と話す。そして、最後の「No HATE -自分に中指を立てるな-」は、自分の声、自分自身を信用すること。ちゃんみなによれば、これが「『私なんて』と思わずに一生懸命生きることに繋がる、今回のプロジェクトにおけるゴールでもある」という。 初回配信では、国内外から集まった7000通を超える応募の中から、1次審査を通過した250名の候補者が参加した2次審査の模様が明かされた。一人ひとりと向き合いながら審査が進んでいく中で印象的だったのは、「なんで受けたんですか?」ではなく、「なんで受けて“くれた”んですか?」と尋ねるちゃんみなの姿勢だ。参加者と同じ目線に立ち、物腰柔らかにポジティブな言葉を投げかけるあたたかな視線からは、彼女自身がこれまでたくさんの刃を向けられてきたからこそ、同じような想いを胸に抱えた参加者たちに全身で向き合って共感している様子が見て取れた。あくまでも、我々が画面越しに目にするのはオーディション全体のごく一部分だ。それを分かった上でも、「No」と否定せず、一貫して参加者の良さを伸ばす場だと安心して見ることができるのは、前述した彼女の姿勢に加え、共催するSKY-HIがBE:FIRSTを輩出した『THE FIRST』やMAZZELを生んだ『MISSIONx2』でもそのような姿を示してきているからこそであろう。 今回誕生するガールズグループは、SKY-HIが主宰するBMSG傘下の新組織・B-RAVEからのデビューを予定している。ちゃんみなとSKY-HIといえば、干支が一回りほど離れていながらも公私ともに仲のいい友人としても知られる2人だ。彼らの交流が始まったのは2016年の『戦極MC BATTLE』の頃であり、ちゃんみなが一躍注目を集めるようになった『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出場していた時期とも重なるという。近年では2020年にリリースされた「Holy Moly Holy Night」でコラボを果たし、彼ららしくふざけ倒した作品でコロナ禍のクリスマスに笑顔を届けてくれたことが記憶に新しい。さらに、2023年3月には横浜アリーナで開催されたちゃんみなのライブ『AREA OF DIAMOND』にSKY-HIが客演で参加し、同曲を披露したことも話題に。SKY-HIの「今ガールズグループオーディションをやらないとダメだと思う」という一言でどんどん話が進んだ(※3)というエピソードにもある通り、こうした約10年来の信頼関係が『No No Girls』の誕生に繋がったのである。 ちゃんみなは日本語・韓国語・英語を話すトリリンガルのHIPHOPアーティストとしても知られるが、歌手を目指すうえでK-POPに大きな影響を受けており、特に2NE1のCLがきっかけで女性ラッパーのかっこよさを知ったと語っている(※3)。彼女のファンには同年代の女性も多いが、ちゃんみなの持つ“女性が憧れるかっこよさ”や誰にも媚びないガールクラッシュ要素は楽曲やクリエイティブにも反映されており、そういったアーティスト性からもガールズグループとの相性の良さが窺えるのではないだろうか。 彼女は以前、インタビューで「昔から自分のことを客観視するタイプなので、(プロデューサーに)向いているとは思う」と語った。10月2日深夜に放送された緊急特番『No No Girlsのすべて』(日本テレビ・長崎国際テレビ)では、歌を一生懸命に頑張っている人に対して真っ向から否定する大人のあり方を問題視していると話し、それが一生ものの障害となって声が出なくなってしまうこともあると言及したほか、10月4日の初回放送では「実力だけはつけてきたけど、人の足を止めたりひきつけられる人間じゃないのかなって」と、自信がないことを話す参加者の言葉を聞き、「泣いちゃいそうになっちゃった。全く同じすぎて、私の昔の理由と」と、過去の自分に重なる胸中に共感している様子だった。 彼女自身が「No」をつきつけられたからこそ、現代にはびこる「No」に苦しむ女性たちに共感し、魂で共鳴することができる。そして、愛やリアルに溢れたこのプロジェクトを目撃した世界中の人々に勇気と希望を与えることができる。これは、誰かの人生を180度変えてしまう影響力をもったアーティストを育成し生み出すプロデューサーとして、非常に重要な能力ではないだろうか。ちゃんみなの人生が参加者たちの人生を救い、さらには毎日を懸命に生きる誰かの人生を救うことにも繋がっていく。『No No Girls』はそのようなプロジェクトになっていくのだろう。「何かをすごく大きく変えるグループになると思う」「ステージに立ってパフォーマンスをしているだけで、誰かが“生きよう、もうちょっと頑張って生きてみよう”と思えるグループになる」(※4)――ちゃんみながそう太鼓判を押す『No No Girls』を、ぜひ多くの人に目の当たりにしてほしい。 ※1:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000118793.html ※2:https://natalie.mu/music/pp/chanmina05/page/2 ※3:https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2179083 ※4:10/2放送「No No Girlsのすべて」より https://tver.jp/episodes/epcc6j73dp
風間珠妃