最高齢は94歳…65歳以上のシニアだらけのキックボクシングジムはなぜ人気? 「坐禅では無心にはなれないけど…」高齢者たちが夢中になる理由
利用者のほとんどは女性
講師である、生井氏は神奈川県横浜市出身の41歳。日本大学経済学部を卒業後、専門学校で柔道整復師の資格を取得した。 19歳からキックボクシングをはじめ、2008年に新人王獲得。元J-NETWORKライト級日本ランキング1位にもなった。 リングネームは「生井・パナスティック・英樹」。子どもが産まれたことを機に引退し、23歳からキックボクシングの指導と同時に接骨院に6年半勤務した。 その時の同僚男性とともに、2017年4月に独立し、世田谷区豪徳寺に「接骨院Palledo(https://palledo.shopinfo.jp/)」を開院する。 2021年にはキックボクシングジム「PEACE PACE(https://peacepace.net/)」を開設。柔道整復師として施術を行いながら、シニアにキックボクシングを指導している。 生井氏に、なぜキックボクシング教室を始めたのか聞いた。 「最初は自分のプロフィールに、キックボクシングも教えていることを書いていただけなんです。教室をやる気はなかった。だけど、だんだんと申し込む人が増えて、今では通っているシニアの方は、30人になります。 昔は、キックボクシングというと、男性がやるものでしたよね。それがブームになって、女性もやるようになった。知られることで、今度は高齢者の間でもブームになるんじゃないかと思い、SNSで発信しています」 ジムの利用者は女性利用者が多いという。それはなぜなのか。 「先生が男(生井氏)であるというのは、大きいと思います。男性は、僕みたいな若造に、頭を下げて習うことに抵抗がありますよね。だけど、その分、それを超えて来てくれた方には、敬意を持って接しますし、大切にします」 介護の世界でも、介護拒否が多いのは男性だ。男性は、新しいことを始めるハードルが、プライドの問題で高そうだ。
デイサービスへの行き渋り対策にも有効?
ジムには、パーソナルコース(マンツーマンで施術との組み合わせで行う)と、7~8人の集団で行うシニアコースがある。 パーソナルコースに通っている高齢者のほとんどは、SNSで見たという人たちだが、シニアコースには近隣住民が多い。月謝も、シニアコースは、週2回・1回1時間で3300円とリーズナブルだ(パーソナルコースは別途)。 神奈川県など、遠方から1時間かけて通い、レッスンもこなす人もいるというのが驚きだ。全員、65歳以上…骨折などの心配はないのか。 「今まで1回もありません。筋肉や骨は使えば強くなります。その人の体の状態に合わせて、無理のない範囲で行うので、その心配はありません」(生井氏) 65歳以上だと、従来の介護サービスを利用しながら通う人も多いのではないか。 「デイサービスと並行して通っている人もいます。デイサービスだと1番カラダの調子が悪い方に合わせたり、座りながらの運動だったりします。70代でも、一般のジムやフィットネスに通っている人もいるので、物足りない人が出てきますよね」 デイサービスに行きたくない理由に「そんな年寄り臭いことは嫌だ」「お遊戯みたいなことはしたくない」などを挙げる高齢者は多い。 そういった高齢者もキックボクシングならば、抵抗なく行く気になれそうだ。 生井氏に今後の目標を聞いた。 「運動習慣は絶対に身に着けたほうがいいです。寝たきりになるなど、筋力が落ちることの恐怖を分かって欲しい。テニスや卓球などのスポーツの選択肢の1つとして、キックボクシングも入れて考えて欲しい。そのために、キックボクシングを通じた情報発信を続けていきます」 運動習慣を身に着けるためにも、キックボクシングの楽しみに触れてみるのはいかがだろうか。あなたもハマること間違いなしだ。 取材・文 田口ゆう
田口ゆう