高視聴率でも地上波NG? テレビで放映されなくなった映画(3)スピルバーグを打ち負かした日本の過激作は?
『不適切にもほどがある!』(TBS系)は、バブル期からタイムスリップした主人公を通して現代社会を皮肉るドラマだった。とはいえ、実際に当時の番組を見ると「これを地上波で?」と心配になる番組も。今回は、かつては地上波で頻繁に放送されていたものの、コンプラの波で放送できなくなったであろう映画5本を紹介する。第3回。(文・編集部)
『極道の妻たち 最後の戦い』(1990)
監督:山下耕作 脚本:高田宏治 原作:家田荘子 キャスト:岩下志麻、小林稔侍、かたせ梨乃、津川雅彦、中尾彬、哀川翔、石田ゆり子 【作品内容】 関西最大の暴力団、堂本組傘下で、香川県高松市に拠点を置く粟津組では、組長の粟津等(佐藤慶)が収監され、代わりに妻の環(岩下志麻)が組を取り仕切っていた。 ある日、環は、大阪の実家を訪れ、妹の真琴(かたせ梨乃)と不動産業者の跡取りとの縁談を持ちかける。そんな中、彼女の元に、堂本組総長が急死したとの知らせが入る。 総長の妻の絹江(藤間紫)は、早速会見を開き、堂本組の新たな組長に若頭の柿沼辰郎が就任したと報告するが、この会見が堂本組と粟津組の溝を生むことになる。 【注目ポイント】 1980年代は、「ヤクザとオンナ」の時代だった。 都市部では、バブル経済を背景にした地上げが横行。さらに、1984年には、山口組と一和会による山一抗争が勃発し、最終的に29人の犠牲者と多数の負傷者が出る大惨事になった。一方、1986年には、男女雇用機会均等法が施行。女性の社会的地位が大幅に向上し、さまざまなシーンで女性が活躍し始めた。 さて、そんな時代に制作が開始されたのが、『極道の妻たち』シリーズだった。 原作はノンフィクション作家・家田荘子の同名実録小説で、監督はテレビ業界出身監督の第一号とちわれた五社英雄。主演は岩下志麻が務める。 「あんたら、覚悟しいや」。男だらけの若い衆に啖呵を切りながら、和装でマシンガンを握る環ー。そんな岩下のクールな姿は、男性だらけの社会に不満を持つ女性の心をわしづかみにし、興行収入8億円の大ヒットを記録。東映きってのドル箱シリーズに成長した。 そして、年1本ペースで放送された『ゴールデン洋画劇場』(フジテレビ系)でも軒並み高視聴率を記録。1991年10月11日放送の第4作『極道の妻たち 最後の戦い』は25.9%を記録し、なんと日本テレビが28億円という高額で放送権を獲得した裏番組の『E.T.』(1982)に2.4%の僅差で勝利している。 とはいえ、コンプラ全盛の今の時代では、濡れ場や過激なシーンが多い『極道の妻たち』は、放送すら難しいことだろう。そういう意味で本シリーズは、日本がまだ豊かだった時代の徒花だったと言えるかもしれない。 (文・編集部)
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