税務調査官「故人の趣味は?」→素直に答えて大後悔…年金暮らしの75歳女性、81歳夫の死から2年後〈追徴税額1,500万円〉を課されたまさかの理由【税理士が解説】
相続税の課税対象は“経済的価値があるものすべて”
相続税の課税対象となるものは、土地や建物などの不動産のほか、現金、預金、有価証券が代表的です。しかし、このほかにも、経済的価値があるものすべてが相続税の課税対象財産となります。 1つで5万円超の財産は、相続税申告の際に個別に計上していかなければいけません。今回の事例で取り上げた高級ワインのほか、車や絵画、骨とう品など、こうした動産についても相続財産として申告する必要があります。 なお、単体でそれほど高価な家庭用財産がない場合には、「家財一式10万円」などとしてまとめて申告するケースも多いです。
“好き”が災い…ワインの価値が「3,000万円」になったワケ
Bさんは、出張で訪れたフランスでワインに出会ったことをきっかけに、ワイン集めが趣味になりました。 もともと凝り性であったこともあり、休みのたびにワイナリー巡りをするようになり、日本に帰ってからも雑誌やインターネットなどで情報収集を続けていたそうです。また時折、Bさんが主導でワイン好きな仲間を集め、ワイン会を開催していました。 Bさんは帰国時、小さなワインセラーを購入。はじめはそこに収まるよう、収集するワインを厳選していましたが、しだいに大きなワインセラーが必要になりました。その大きなワインセラーもやがてパンパンになり、「ワインが家に入りきらない」と、Bさんは最終的に自宅近くの賃貸物件を契約。“ワイン専用部屋”が誕生することとなったそうです。 Bさんに投資などの目的はなく、あくまでもワイン好きが高じて長年ワイン収集をしていましたが、なかには年代物のヴィンテージワインもありました。 また近年ワインの価格は高騰しており、Bさんが保有していたワインの価値も上がっていたのです。 こうした背景もあり、税務署がバイヤーなどの専門家に依頼し鑑定評価してもらったところ、Bさんが集めたワインは3,000万円の価値があると認められました。
高級ワインは「投資対象」としても有用だが…
日本ではまだポピュラーではありませんが、ヨーロッパにおいて「ワイン投資」は歴史が深く、伝統的な資産運用手法のひとつです。 基本的には有名な高級ワインが投資対象となり、投資家はワインを実物資産として保有し、時間とともに熟成が進み、より価値が高まってから売却します。 前段で「近年ワイン価格が高騰している」と述べましたが、たとえば日本でも、1990年頃はボルドーの5大シャトーが1~2万円で購入できましたが、いまでは10万円を超える値段がついています。 5大シャトーの年代物や、カルトワインと言われる入手困難なもので1本50万円~数百万円するものも珍しくありません。高いワインの売買例としては、2018年にサザビーズで1945年もののロマネ・コンティ2本がそれぞれ6,300万円、5,600万円で売買されました。 一般的に、お酒のような飲料を相続税対象として申告することはありませんが、市場性があり、その価格で売却できると認められるものであれば、相続税の申告の際に含めなければなりません。 したがって、高級なワインを保有している場合は申告に含めるのが無難です。また、投資で利益を出した場合には原則必ず申告を行いましょう。 自覚の有無は関係なく、資産価値があればその財産は漏れなく「課税対象」となります。心当たりがある場合はお気をつけください。 相続人がこうした財産の存在に気づかずに、あとから「申告漏れ」となるケースは決して珍しくありません。こうしたトラブルを防ぐためにも、生前に遺言書や財産目録を作成しておくことをおすすめします。 宮路 幸人 多賀谷会計事務所 税理士/CFP
宮路 幸人
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