海外に出る前に知っておきたい「日本のキホン」─「生きがいって何ですか?」
IKIGAIと人工知能
当初は日本のことを紹介する、という意図で書いたIKIGAIですが、最近になって思わぬ展開が生じてきました。人工知能と人間の脳の関係を考えるうえで、IKIGAIがキーワードとして浮上してきたのです。 イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグなど、人工知能研究者がゲストで登場することで知られるMITのレックス・フリードマンのポッドキャストでも、IKIGAIが話題にのぼるようになりました。 具体的には、たとえば人工知能が人間の仕事を代替するうえでIKIGAIが失われるのではないか、またIKIGAIの持つ、外部からの評価とは別の私的な価値という性質が、人間と人工知能の「アラインメント(調整)」を考えるうえで重要なヒントを与えるのではないか、というようなことです。もともとは日本論として出発したIKIGAIが、このような研究の文脈でも重要な概念になっていることにとても興奮します。 IKIGAIをめぐる日本人の旅は、まだまだ始まったばかりです。IKIGAIが海外に行く方々にとっての助けになるだけでなく、私たちの日常を支える思想になってくれること、さらには海外勢に押されがちな人工知能の研究、人間と人工知能のアラインメントの研究においても新展開をもたらしてくれることを期待せずにはいられません。私もまた、日々IKIGAIをもって精一杯努力していきたいと思います。 茂木さんがお勧めする「生きがいをよく知るための一冊」 生きがいを持つということは、世界のなかに自分ひとりの部屋を持つようなものです。ウルフのこの古典は、私たちに個性を活かして生きることの大切さを教えてくれます。
Kenichiro Mogi