金子ノブアキ、40代で気づいた「自分の本質」とは?土屋太鳳に感じた“強さと優しさ”も語る
内田英治監督のすごさ─衝撃だったことは?
──金子さんは以前から内田監督と仕事をしたいと思っていたそうですが、それはどうしてでしょうか? 内田監督の作品が暗くて悲しいからです。そういうものをちゃんと描ける機会が、内田監督作品にはある。それを商業という大きな枠の中で、監督がちゃんと神輿の上に立って作っているという現状が、僕は素晴らしいと思うんです。コンプラだ何だといろいろ難しくなっているなかで、内田監督とだったら、遠慮なく暗くて悲しいものにありつけそうだなと思いました。実際に『ミッドナイトスワン』を観たときは、すごい衝撃で、動けなくなってしまった。それってすごく大事なことですよね。忘れちゃいけない温度感と質感だと思うし、それによって浄化されることもすごくある。そのような作品が減ってきているのは、もしかしたら本当に時代が困窮していて、そういうものが作りづらくなっているからかもしれない。そう思うと、ああいうものに一喜一憂できるのって平和の証だなと思うんです。ああいうものが作られること自体がポジティブなことだと思うんですよね。「こんなの観ている場合じゃねぇ」ってならないようにしなきゃいけないなと。 ──実際に内田監督作品に参加してみて、気づきや発見はありましたか? 編集後のものを観て発見したことはあります。「ここ使うんだ、気抜けないな」とか(笑)。あとは喫茶店のシーンで、僕の背中からレールを使って撮影していたんですが、カット尻がすごく長くて。カットがかかるまで無言で待っているシーンだったんですけど、実際、そのカットをギリギリまで使っていて、謎の間があるんです。試写で観て衝撃を受けました。でも、だからこそ観ていてすごくハッとする。そういう違和感がいろんなところに意図的に入れ込まれていました。ライブでも、いいライブを観ているときって静寂の中にいるみたいになるじゃないですか。それと近いなと思いました。僕らは気が抜けないので、恐ろしい監督だなと思いますけど(笑)。