「細胞シート」実用化へ セ硝子と山口大、再生医療の共同プロジェクト本格始動【宇部】
セントラル硝子(前田一彦社長)と山口大(谷澤幸生学長)は3日、宇部市役所で共同会見を開き、両者が2021年から共同で開発を進めている再生医療製品「他家〝凍結保管〟線維芽細胞シート」の実用化に向けたプロジェクトを、市と県の補助金を得て本格的に始めたと発表した。1日付で同大医学部内に「組織再生治療学講座」を設置。動物での非臨床試験、人への治験を経て、30年までの上市を目指す。 開発を進める細胞シートは、患部に移植することでシートから分泌される成長因子が患部の局所の組織再生を促進する効果を持ち、外科分野の難治性皮膚潰瘍治療、縫合部の組織再生治療などへの高い有効性が期待されている。 シートに使う線維芽細胞は人体のあらゆる場所にある細胞で、扱いやすいという特徴がある。特殊技術の開発により、シートを凍結保管後に解凍しても米食品医薬品局が規定する70%以上の細胞生存率をクリアした。 患者以外の健康な人から採取した線維芽細胞を用いることで、大量生産が可能になった。凍結保管でシートの在庫確保、柔軟な供給も実現でき、製造コストの低減と利便性向上が図られるという。 市場規模は、当初のターゲットとしている難治性皮膚潰瘍の分野だけでも国内外で数十億円規模。他の医療分野に拡大していければ、100億円規模になると見込む。 前田社長は「細胞シートは当社のライフサイエンス事業の大きな柱になる。一日も早く実用化のめどを付け、創業地の宇部工場に本格的設備を建設したいと考えている」と語った。 同プロジェクトに対し、今年度、市は再生医療等先端的研究開発実用化推進補助金として1500万円、県はやまぐち再生医療等実用化・産業化推進補助金として3000万円の交付を決定している。 篠﨑圭二市長は「成長産業を応援していくことは地域経済の発展に欠かせず、意義のあることだと考えている。大学のあるまちの強みを生かし、研究シーズの事業化、人的資源の活用の支援に尽力していきたい」と述べた。