為替「しっかり注視」と財務相、G20前に介入動きにくいとの見方も
(ブルームバーグ): 足元で円が1ドル=154円台と約34年ぶりの安値圏で推移する中、16日の閣議後会見での鈴木俊一財務相の発言は「しっかり注視している」と踏み込み不足にとどまり、為替への反応は限定的だった。市場では介入への警戒感が強まっているが、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議など一連の国際会議を前に日本は動きにくいとの見方も出ている。
鈴木財務相は、為替の動向に対して「必要に応じて万全の態勢、対応をしっかりやっていきたい」と述べた。足元の動きは過度か、急激かという問いに対しては、「まさに万全の対応を取ることであり、そこの見解を私が言うことはふさわしくない」と述べるにとどめた。
15日の外国為替市場で円は米国時間に一時154円45銭と、1990年6月以来の安値を更新した。同日発表された米国の小売売上高が市場予想を上回り、米経済の堅調さが示されたことを受けて金利が上昇し、ドルが買われた。日本の為替介入への警戒感が強まる中、市場では通貨当局の発言が注視されている。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、為替介入に関して、「思っていたよりもなかなか介入しないというのが率直な感想」と指摘。「投機筋のポジションも非常に大きく円売りに傾いている。投機的とも言いやすくなっており、そろそろなのではないか」との見方を示した。ただ、G20が介入を手控えさせる要因になっている可能性はあるともみている。
152円台に円安が進んで以降、日本の当局からは2022年の円買い介入前に発っせられたような強い円安けん制は聞かれていない。鈴木財務相と神田真人財務官は米ワシントンDCで今週開催されるG20財務相・中銀総裁会議や国際通貨基金(IMF)・世界銀行春会合などに出席する。
鈴木財務相は、国際会議で為替が話題になるかとの質問に対し、現時点でG20で為替を明示的に取り上げた議題は設定されていないが、話題にはなると思うと指摘。為替を含めた国際的な話題には「G20に限らずさまざまな機会を捉え、必要に応じて日本の立場をしっかり伝える」と語った。