独走ソフトバンク唯一の不安、山川穂高不振のワケ 名コーチが指摘する「ズレ」とは?
これらの打席を見る限り、山川自身のストライクゾーンがちょっと内寄りにズレているのではないかと思ってしまった。ボール1個分ほどストライクゾーンがインコースに寄っているため、アウトコースの球を見逃したり、打ち損じたりしている。 そもそも好調だった一昨年も、左投手の外に落ちていくボールを苦手にしていた。その代わり、少しでも甘く入った球は積極的にスイングし、しかも1球で仕留めるだけの技術と集中力があった。 もともと高打率を残す打者ではないが、それでも2割6~7分を打って、40本塁打を打ってくれればチームとしても御の字のはずだ。それが今年は打率が上がらず、現在も2割2分台に甘んじている。 【誤算だった柳田悠岐の長期離脱】 ではこうしたフォームになり、結果的に打率を残せなくなっている原因はどこにあるのか。 私は、去年の"ブランク"が影響しているように思えてならない。自身の不祥事により、昨シーズンはほぼ1年間を棒に振った。それによる感覚のズレがあるのではないだろうか。前述したストライクゾーンのズレなどは、その典型とも言える。 また昨年と異なる環境の違いによる、メンタル面の影響も考えられる。 西武からソフトバンクに移籍した今季、本来ならば柳田悠岐のうしろを打つはずだった。言うまでもなく、確実性と長打力を兼ね備えた柳田は相手バッテリーが最も警戒する打者である。バッテリーも神経をすり減らしながらの対戦となるため、柳田のあとを打つバッターはややマークが甘くなることがある。 ところが、柳田はケガにより長期離脱を余儀なくされた。ソフトバンクにはほかにも近藤健介など好打者は揃っているものの、必然的に4番に座る山川へのマークは厳しくなった。ちなみに柳田が離脱したのは5月末で、山川の6月の本塁数は0本。これは単なる偶然なのだろうか。 柳田の離脱により、山川に「やらなきゃいけない」という思いがより芽生えたことは容易に想像がつく。しかしその思いとは裏腹に、ブランクによる感覚のズレを克服できておらず、技術的な部分も取り戻せていない。
これはあくまで想像の域を超えないが、「打たなきゃ」という思いが強いあまり、強引になっている部分もあるのではないか。そのことで体が開き、外のボールが届きにくくなっている。 とはいえ、8月に入ってからのバッティングを見ると、少しずつ感覚を取り戻しつつあるのはたしかだ。あれこれと考えすぎず、まずは自分のタイミングで打つこと。その結果、以前のように外角のボールを巻き込むようにして叩けるようになったら、その時が本当の復調のサインだろう。
木村公一●文 text by Kimura Kouichi