新NISA「こんなはずじゃなかった!」…加熱するNISA報道でまかり通る「投資の非常識」の罠
シミュレーションは、「絵に描いた餅」
’24年1月からスタートする「新NISA」。ネット上では、連日、NISA関連のニュースや記事が配信されている。だが、中には、NISAのメリットを強調しようとするあまり、個人を欺くようなものもある。しかも、当の金融庁のガイドブックにも、堂々と記載されているのだ。何が問題なのか? その実態を明らかにしよう。 【完全にアウト!】ヤバい…! 金融庁のパンフレット「驚きの中身」がこちら……! ◆行き過ぎたNISAのアピールが目に余る状況 NISAを巡る報道が過熱している。NISA(少額投資非課税制度)は、名称どおり、投資で得られる利益にかかる税金(税率約20%)がゼロになるという国の制度。これだけで十分なメリットであり、さらに、新NISAでは、非課税投資枠が大幅に拡大、非課税投資期間は無期限化される。個人の資産運用に革命をもたらすような、画期的な制度であることは疑いようがない。 しかし、そうしたメリットをアピールしたいがために、誤解を招くというよりも、はっきり言えば〝ウソ〟と言ってもいい解説が横行している。それを鵜呑みにしてしまうと、後々、NISAで投資を始めた人を中心に、「こんなはずじゃなかった!」と思うケースが大量に出てくる可能性がある。 ◆「資産運用シミュレーション」に騙されてはいけない 問題は、NISAで資産運用をしたときのシミュレーションだ。よくあるのは、「毎月○万円ずつ積み立て投資をして、年利○%で運用した場合」といったパターンで、20年後、30年後の利益が試算されている。例えば、金融庁の『はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック』(最新版)では、「長期投資の効果」として、毎月1万円積み立てて年利3%で運用した場合、20年間で240万円が約330万円に、40年間で480万円が約930万円になる、というシミュレーションが記載されている。 金融庁は、年利は3%と控えめな数字を使っているが、他の記事では、年利5%という設定が多く、それで、20年とか30年間運用すれば「老後は安心」、といった内容が散見される。たしかに、毎月3万円積立てをして、年利5%で30年間運用すれば、1080万円が約2500万円になる計算だ。 こうしたシミュレーションのどこが問題なのか? この手のシミュレーションは、必ずと言っていいほど「複利」で試算されている。「投資で得た収益を元本に加えて運用する」という意味で使っており、投資の利益が再び投資に回された結果、利益が新たな利益を生み、どんどん利益が膨らんでいくとされている。 こうしたシミュレーションと解説に疑問を覚えない人はマズい。複利という言葉が、誤って使われているのに気づいていないことになる。