新NISA「こんなはずじゃなかった!」…加熱するNISA報道でまかり通る「投資の非常識」の罠
投資に「複利」は無関係
そもそも複利とは、金利や利息の計算方法のこと。お金を預けたり借りたりすると、元本に利息が付くが、複利では、利息を元本に組み入れ、その利息を組み入れた元本に次の利息が付く。簡単に言うと、「利息に利息が付く」のが複利である。なお、利息を元金に組み入れない場合は「単利」という。単利では、利息に利息は付かない。 基本的には、複利も単利も、預貯金やローンについて使う用語である。銀行の定期預金には複利型と単利型があり、一般的な住宅ローンは複利で計算される。住宅ローンの残高がなかなか減らないのは、利息に利息が付くからだ。 複利や単利で金融商品の利息を計算する場合、前提となっている条件がある。まず、元本保証がされていること。そして、あらかじめ決まっている利息が、一定期間、確実に付くことだ。この条件がないと、複利計算も単利計算も意味がない。こうした条件に該当するのが定期預金や住宅ローンというわけである。 したがって、NISAの投資対象となっている株式や投資信託に関して、複利は全然関係ない。元本保証はないし、あらかじめ確定している利息も付かないからだ。つまり、前述したようなシミュレーションは、まったくの無意味ということになる。 ◆「複利効果」という表現のあざとさ 「あくまでシミュレーションなんだから、そんなに目くじらを立てなくても」という人もいるかもしれない。だが、一連のシミュレーションは、〝机上の空論〟で見過ごすことはできない。個人をミスリードさせようという〝意図〟を感じる。 わざわざ、定期預金などの利息計算で使われる複利というワードを使って、「NISAで投資をすればとにかく儲かる」というイメージを、実態以上に植え付けようとしているようにしか見えないのだ。 そのように邪推するのには理由がある。資産運用シミュレーションの説明をする際、「投資で得た利益を再投資してさらに利益を得る」ことを、「複利」とは言わずに「複利効果」という表現を使っているケースが多い。おそらく、複利と言い切ってしまうと明らかな誤りなので、後々、言い訳ができるように、「複利効果」=「複利っぽい効果」と解釈できるように、意味を曖昧にしているのだろう。 本来の意味を分かっていると思われる分、個人を誤解させるような表現を使うのは、何も知らないケースよりも〝悪質〟だとは言えまいか。