「ディアブロ」のシャシーとエンジンを使ったヴェクター「M12」が3800万円ならお買い得!? スハルト大統領の息子の野望で散っていったスーパーカーとは
ディアブロのシャシーをベースにしたM12
1996年のデトロイト・モーターショーで生産型としてデビューしたM12は、見た目はWX-3に似せられていたものの、中身はランボルギーニ「ディアブロ」のシャシーをベースにしており、ディアブロのV型12気筒エンジンをトランスミッションの前に配置したミッドマウントバージョンが搭載されていた。 インテリアはクライスラー時代のランボルギーニのパーツを流用し、ヴィーゲル時代よりも洗練されたデザインに移行。アメリカンな威勢の良さはWX-3より抑えられ、よりイタリア的なスーパーカーのセオリーに近づけられていたとされる。 5.7Lの自然吸気V12で492psを発生するM12は、1990年代半ばに製造されたクルマとしては紛れもなく速かった。時速60マイルまで5秒もかからなかったが、当時の識者やメディアはその洗練性について賛否両論。実際には否定的な意見が多勢を占めていたせいか、マーケットでもサーキットでも何らの実績を挙げることはできなかった。 その後、メガテックはランボルギーニをVWアウディ・グループに売却し、新たに親会社となったアウディは、ランボルギーニV12エンジンをヴェクターに供給しないとの決断を下した。 こうして、ヴェクターの歴史はいったん幕を閉じることになった。その後、ジェラルド・ヴィーゲルは2006年に「ヴェクター・モーターズ」社を興し、翌年には「WX-8」プロトタイプも発表したが、2021年にヴィーゲル氏が逝去したこともあって、現在に至るまで生産化には至っていないようだ。
マーケット評価はいかに?
この8月に開催されたRMサザビーズ「Monterey 2024」オークションには、ヴェクターの波乱万丈な歴史を彩る2台のプロトタイプと2台の生産モデル、合わせて4台が出品された。
1993 Vector Avtech WX-3R Roadster Prototype
ヴェクター史上唯一のオープンモデルとなるはずだったWX-3Rロードスターも、このプロトタイプ1台のみが現存するという。 1993年のジュネーヴ・ショーに、前年同じ会場でデビューしていたアヴテック WX-3R プロトタイプとともに出展され、当時はヴェクター社の広告や自動車専門誌にも多数掲載された。メガテックに会社を奪われたのちは、創業者のジェリー・ウィーガートがクーペ・プロトタイプとともに引き取り、2019年まで所有していたことが判明している。 またこちらもクーペと同様、2019年から2021年にかけて、11万6000ドルを超える費用を投じたメカニカルパートのレストア作業を受けている。WX-3R クーペ プロトタイプと同額にあたる、130万ドル~150万ドル(邦貨換算約1億8700万円~約2億1600万円)のエスティメートが設定されたものの、こちらも流札に終わってしまった。
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