実家はもう処分したわ…父を失った年金月13万円の70代母、思い出の自宅を捨て「綺麗に終活」。50代子への「まさかの宣言」【一級建築士が解説】
老朽化した家をどうする?相続とリフォームの問題
Aさんが解決すべき課題は大きく2つあります。1つはこの家を誰にどのように相続するかという問題。もう1つは、自分に適した仕様へリフォームするかどうかの問題です。 1.相続の問題 相続をスムーズに完了させるには、事前の準備が重要です。なぜなら、相続財産の大きさに関わらず相続人間で争いに発展することがあるため、兄弟姉妹の人間関係をも破壊してしまう可能性があるからです。 Aさんは、子供たちが家を継ぎたくないことを知り、相続で揉めるのではないかと心配しています。約1,000万円ある預貯金は簡単にわけられるのに対し、家は分割できません。相続がうまくいかないのではないかと悩みます。 また、法改正もAさんの悩みを大きくします。相続登記が義務化され、正当な理由なく相続登記をしなかったときは罰則が科せられるようになりました。東京法務局のホームページでは、相続登記義務化について以下のように明記されています。 (1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。 (2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。 Aさんは、なぜいままでこんなに大切な話をしてこなかったのかと自分を責めるようになりました。 2.リフォームの問題 持ち家でライフステージに合わせて住みやすい環境を維持するためには、計画的なリフォームが欠かせません。なぜなら、住む人の年齢や状況に応じて必要な設備や仕様は異なるからです。 Aさんは持ち家に20年前に大きくリフォームを施しましたが、まだそのころは体も元気であったため老後の生活を見据えたリフォームは実施しませんでした。しかし、20年経過したいま、状況は大きく変わっています。夫はいなくなり、子どもたちは独立したため、使っていない部屋もあります。足腰も弱くなってきたため、子どもたちが使っていた2階には1週間に1回程度しか上がっていません。 思い返せば、20年前のリフォームも定年退職のお祝いを兼ねて、特にそれ以上のことはなにも考えずに実施していました。もしもあのとき、将来のことを考えて水回りを使い勝手のいいものに変更したり、手すりを設置したりしておけば、今回のリフォームに必要な金額はかなり抑えられたはずです。 こうして、Aさんはそもそもリフォームするかどうかについても悩むようになりました。