【親の老後】子どもとして仕送りなど、何かしら「援助」をするべき?今の日本の実態とは
扶養には大きく分けて、「社会的扶養」と「私的扶養」の2種類があります。現在の日本は、公的年金制度を利用して、社会全体で働けない人を支える「社会的扶養」が中心となっています。 しかし以前は、家族や親族が仕送りで働けない人を養う「私的扶養」が一般的でした。そこで今回は、「社会的扶養」と「私的扶養」の違いを説明しながら、日本において親への「私的扶養」が難しくなった理由について解説します。 物価高騰で日々の生活に影響が出ている昨今、親に対する扶養に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
親へ仕送りしている人の割合
まず、親へ仕送りをしている人がどの程度いるのかを確認してみましょう。厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査」によると、親へ仕送りをしている世帯は、123万4000世帯でした。総世帯数が5178万5000世帯ですので、全体における割合は約2.4%となります。 上記の結果から、多くの世帯が仕送りをしているわけではなく、私的扶養の割合は少ないといえるでしょう。
私的扶養が難しくなった理由とは?
私的扶養の割合が少ないことは分かりましたが、その背景としては、次のことが考えられます。 かつての日本は、親世帯と子世帯が同居するいわゆる二世代家族での生活や、子世帯が近所に住んでいることが特徴でした。そのため、家族内で私的に扶養することが一般的だったといえます。 しかし経済成長の過程で、地方から大都市に出て働く若者が増えて、そのまま都市部で家庭を持ち、親の近くに住まない・同居しない家庭が増えていったと考えられています。 また、医療技術の進歩や生活環境と食生活の改善などにより、健康な生活を送れるようになり、平均寿命も延びています。子が年金を受給する年齢になっても、親世代は健在であることも珍しくなく、私的扶養の期間が延びたことも影響しているでしょう。
今では社会全体での扶養が一般的
現在は公的年金制度が充実したことで、社会的扶養により、高齢者だけの世帯でも生活が可能になりました。 内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)によると、「経済的な暮らし向きについて心配がない」と答えた60歳以上の割合は、74.1%と報告されています。 また、総務省統計局の「家計調査年報(貯蓄・負債編)2019年(令和元年)」によると、世帯主が60~69歳の二人以上世帯における貯蓄現在高は2330万円と、全世帯の1755万円と比べて、約1.3倍であることが分かります。 上記から、60歳以上の親世帯は、金銭的に余裕があると考えられるでしょう。したがって、子どもの援助がなくても、生活できる可能性が高いのかもしれません。