舞台上のカミングアウト 新宿2丁目で堂々と生きる彼らがくれた勇気と希望
2002年、ゲイの演劇集団フライングステージの舞台に出演することを決意した青山さんは、舞台を通して周囲やお客さんにもカミングアウトをした。何も鎧わず役を通して観客と向き合うことができたという彼の演技、そしてその感情は自然と呼吸に乗り観客に浸透していく。舞台は大盛況のうちに幕を閉じた。 「あの時の快感は今でも忘れることができません。遅くに新宿2丁目に出てきた僕は特に男性的魅力が溢れていたわけでもないし、モテませんでした。そんな僕でも多くのゲイの観客の前に立つことで、生身でゲイコミュニティーを実感し、生まれて初めて何かに属することができたと感じた幸せな時間でした」
時を同じくして、プライベートでも印象深い出来事に遭遇する。ある時、セックスをしていると、ふと行為を止めた相手に、 「ダメだよ、もっと自分のこと好きにならなきゃ」と言われた。幼い頃にシスターボーイと虐められて以来、自分の女性性を否定し続けてきたことで、感じて反応してしまうのは女性っぽいことと無意識のうちに閉じこめていた。そんな自分を解放し、身体レベルで自己肯定できた彼との体験は青山さんにとって忘れられないものとなった。 舞台や映画、そして私生活を通して世間にカミングアウトをした青山さんは、徐々に自分のなりたかった姿、なりつつある姿を具体化していった。
「若い頃は自分のことが中心になりがちだったけれど、今、なぜ芝居をやるのかと聞かれると、自分と違うものに出会うのが面白くて。それが今の僕の原動力なのかもしれませんね」 「そして」と青山さんは続ける。 「演技であれ、セックスであれ、ゲイであることを自覚し肯定することによって自分自身を解放し、他者に向き合うことができて本当によかったと思っています」 壁に貼られた写真の青年は今も遠い昔、その葛藤の日々を一人心許なく眺めている。手前では椅子にどっしりと腰を下ろした青山さんが過去や未来、そして現在の自分自身をしっかりと見つめ続けているのだった。 (取材・文・撮影/ 藤元敬二)