「おじさんはダイヤモンドの原石」 中年男性輝かせる女性カメラマン
「目をつぶってあごを上げてください。そう、かっこいい」 女性カメラマンが柔らかな口調で、中年の男性にポーズを指示している。「そんなかっこよくないやろ」と男性は少し照れた様子でポーズをとり、写真に納まった。 【写真】加奈恵さんが撮影した「おじさん」 加奈恵さん(37)は、“おじさん”を専門に撮影し、自らを「おじカメラマン」と語る。広島市内を拠点に、中年男性の撮影を続けており、県内外から撮影依頼が相次ぐ。「おじさんにはダイヤモンドの原石のような魅力がある」と話す。 かつてモデルだった加奈恵さんは、ファッションショーなどに出演していた。活動を続けるうちに、次第に写真を撮られる立場ではなく、多くの人の輝く姿を写真に撮りたいと考えるようになった。2014年から本格的にカメラマンとなり、成人式や結婚式などの撮影を続けた。 「おじカメラマン」になる転機は今年1月、プライベートで知人の60代男性を撮影したことだった。写真に納まった姿は、いつも見ている本人よりずっとかっこよく見えた。男性も「ハンサムに撮ってもらった」と喜んでいた。 加奈恵さんは、改めて自身が中年男性に抱いていたイメージについて考えた。「おじさん」と聞くと、どこか自信や元気のない姿を思い浮かべることが少なくなかった。だがカメラを通すと、これまで目を向けていなかった魅力を感じるようになった。「少年のような心を持っていても、表に出せないおじさんたちがたくさんいる。そんな無邪気さを写真を通して伝えたい」。本格的に中年男性を撮影していくことを決めた。 撮影場所は客の要望に合わせる。スタジオだけでなく、職場で仕事風景を撮ったこともある。おじさんの年齢層も幅広く、80代の男性からも依頼があった。 広島市西区の上野清文さん(67)は9月、広島市内のスタジオで撮影に臨んだ。趣味でボディービルを続けており、鍛えた体でさまざまなポーズをとった。「普通のスタジオで、自分だけを撮ってもらうのは恥ずかしい。おじさん専門のカメラマンだから、今の自分の姿を残したいと思った」と語る。 今後は、おじさんを撮影する専用の写真スタジオを構えるとともに、過去に撮影したおじさんたちが集まるオフ会の開催を検討しているという。加奈恵さんは「撮影が楽しかったという思い出になってほしいし、撮影が人生の何かのきっかけになったらいい」と話している。 撮影依頼は(090・3176・6363)。【井村陸】