1人で5分の訪問看護、でも記録上は〝2人で30分〟 「患者や家族はおかしさに気付かない」ホスピス型住宅の「手厚い」ケア
背景には、高齢化に伴う死者数の増加と国の医療費抑制策がある。日本の年間死者数は2003年は約101万人だったが、23年には約158万人となった。 一方、国は医療費を抑えるため病院の長期入院を少なくする政策を取ってきた。家で最期を迎えたいという国民の希望に応える面もあるが、自宅でのみとりに困難と不安を感じる家族は多い。 難病などがあると、一般の老人ホームでは受け入れを断られることも。そこで、ニーズに応える形で登場したのがホスピス型住宅だ。厚労省の幹部は「診療報酬を過剰に取っているという問題意識はあるが、難病患者らの受け皿となっていて、助かっている人もいる。悩ましい」と話す。 財務省は昨年11月、審議会で医療費を巡り適正化すべき項目の一つとして訪問看護を提示。ホスピス型住宅の運営会社が一般の介護大手と比べて高い利益率を上げていることを指摘した。介護保険の場合は、要介護度に応じて利用限度額が設定されているが、医療保険にはそうした仕組みがないという制度的な課題も挙げた。
「報酬が高すぎる」「『おいしい』と言える状況になってしまっている」。そうした声は介護業界の中からも上がる。ホスピス型住宅の訪問看護の報酬について、実施すればするほど受け取れる現在の「出来高払い」ではなく、一定額の「包括払い」に変更すべきだとの提案が出ている。 ▽行政の監査は「ザル」縦割りの壁も ホスピス型住宅のビジネスモデルを可能にしている要因としては、患者や家族が医療費の負担を感じにくいという点もある。通常は1~3割の自己負担を求められるが、月の医療費が高額になった場合は患者負担を一定額にとどめる「高額療養費」という制度がある。難病の場合は医療費助成を受けられる。 さらに、生活保護受給者であれば自己負担はゼロ。生活保護の人を多く受け入れている老人ホームでは、看護師が過剰な訪問看護に異を唱えても、会社側に「入居者さんが不利益を受けるわけではないから」とかわされる。 複数の看護師は終末期ならではの事情も指摘する。「みとりの際は家族も余裕がなく、医療費がどうなっているかを気にすることはほぼない」