マンガ家に“就職する” 夢を実現する条件とは?
■途中からでも夢を実現できる そんな、こしのりょうさんですが、常に順風満帆だったわけではありません。「マガジンの増刊やモーニングで連載したけど、なかなかヒット作に恵まれなかったそうです。それでも、マンガをあきらめず、ずっと描き続けてきて、これでダメならやめる、くらいの覚悟で描いたのが「Ns’あおい」。奥さんが看護師の仕事をしていて、そばで支えてくれたので、その身近なテーマで描いたそうですが、それがヒットしました」と佐渡島さん。マンガに対する情熱を持ち続けた結果、夢を実現したそうです。また、前述の小山宙哉さんもデザイン会社のサラリーマンを経て、マンガ家に転身。「ナニワ金融道」の青木雄二さんは、マンガ家を目指し、20代で出版社に作品を持ちこむが、掲載には至りませんでした。その後、職を転々としながらもマンガを描き続け、45歳という遅咲きながら、「ナニワ金融道」でデビュー、大ヒットとなりました。 “軌道修正”という意味では、佐渡島さんには別の持論もあります。将来を考える、夢を目指す、という岐路に立たされるときに、1つの選択肢をしぼるのではなく、「なんでもいいので、まず社会に出ることが大事」と言います。「ナニワ金融道」の青木雄二さんや「宇宙兄弟」の小山宙哉さん、「Ns’あおい」のこしのりょうさんは、マンガ家以外の仕事を経験しています。「まず、社会に出て経験を積んで、それから軌道修正――自分に合う仕事、やりたい仕事を探してもいいのではと思う」。佐渡島さん自身、はじめからマンガ編集者になりたいとは、思っていませんでした。学生時代は、大学院に進み文学の研究者になることも、考えていたそうです。「社会をみるために就職活動だけはしてほしい」という親の勧めで採用試験を受けることに。講談社から内定を受け、「文学の編集は、やってみたいと思った」と、就職することにしたと言います。しかし配属は希望通りにいかず、マンガ雑誌の編集部へ。「入るまではマンガの編集がどんなものか、全くわからなかった」と振り返りますが、実際、担当してみると、その仕事の面白さに気づき、没頭していくことになりました。 これはマンガ家だけに言えることではないでしょう。自分が憧れているものに対して、並々ならぬ愛情を注ぐこと、そして、あれこれ悩むより、まず社会に出てみて、多くの経験を得ること。それが夢をかなえる最大の近道なのかもしれません。