“手製の水パイプ”で子どもが大麻を吸引…タイを「ほほえみの国」から「ドラッグの国」に変貌させた「大麻合法化」の知られざる現実
日本人も「大麻ツーリズム」でタイへ
NY市に住む知人はこう語る。 「子どもを連れて歩くときには、たとえ遠回りになっても必ず避けて通るストリートがある。そこには日中からマリファナの臭いが漂っていて、大人でも胸が悪くなる。とてもじゃないが、子どもにこの臭いを嗅がせるわけにはいかない」 「路上にたむろして、けたたましい声を上げて笑う使用者もいる。なんだか気味が悪くなってくる」 別件で調査に出向いた折、実際に現地を訪ねてみると、予想を遥かに超えた光景が広がっていた。青臭く、甘ったるい大麻特有の刺激臭が充満しており、現役時代の大規模大麻事件の捜索現場を思い出した。「一般人ならこの臭いだけやられるだろう」と思った次第だ。 先のコメントにあったとおり、2022年にアジアで初めて大麻の合法化に踏み切ったタイの首都・バンコクの状況も相当なものだ。タバコ屋やコンビニ店よりも“大麻ショップ”が多いとされ、露店でも公然と販売されている。そうした店には“大麻ツーリズム”でタイを訪れた外国人観光客が多数出入りしており、なかには日本人相手の店舗まである。どの店舗でも“ゴリラグルー”や“ogクッシュ”など多くのブランド大麻を陳列し、量り売りする露店も存在した。路地裏では子どもたちが手製のポング(水パイプ)で大麻を吸っている光景を目撃……。これには大きなショックを受けた。
ゴールデントライアングル
タイ政府は22年6月に「大麻の有害成分(THC/テトラヒドロカンナビノール)の含有量0.2%以下の大麻を“医療・健康増進目的”に限り解禁」するという、筆者としては理解しがたい政策を導入した。というのも、0.2%といえば大麻1グラムにTHCが2ミリグラム含有することになるが。だが、これではほとんど効果はない。吸煙で僅かでも作用を感じようとするなら約3ミリグラム、経口投与なら5~6ミリグラムは必要だろう。2ミリグラムでも大量に吸煙したり、成分を濃縮したりすれば効果を得ることはできる。一体、何のためにこのような制度を導入したのか、いまだによく理解できない。 だが、これが事実上、“大麻の解禁・自由化”と捉えられ、街中では0.2%どころか10~20%の強力な大麻が公然と販売されるようになった。タイの山岳部はヘロインや覚醒剤などの世界的な密造地帯“ゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)”の一部に位置するため、国内にはあらゆるドラッグが蔓延している。タイの友人の元捜査官から聴いたところによれば、タイではこの1年で覚醒剤錠剤、約3億8000万錠をはじめ、多種大量のドラッグが押収されており、国内では覚醒剤、ヘロン、ケタミン、大麻など、なんでも手に入る状況にあるとのことだ。「“ほほえみの国”タイが“ドラッグの国”へと変貌している」と彼は悲嘆していた。とりわけの若者の覚醒剤と大麻使用が大きな問題になっているというのである。