《ブラジル》第15回全伯俳句大会開催=席題総合1位が小斎棹子さん「老い行けば死もまた身近陽炎える」
ブラジル日本文化福祉協会(文協)が主催する第15回全伯俳句大会(宮川信之実行委員長)が18日に開催され、27人が参加した。席題総合得点では小斎棹子さん(16点)が1位、中馬和子さん(16点)が2位、大野一歩さん(11点)が3位、児玉和代さん(9点)が4位、浅海喜世子さん(9点)が5位だった。人数は昨年よりも減ったが、2、3位とも初参加で入選を果たすなど新人の活躍が目立つ大会となった。 最初に先亡者に1分間の黙祷を捧げた後、山下譲二文協評議員会会長が主催者として「AIやロボットの活用が進んで人間性が失われていく時代だからこそ、日本人の感受性を保つ俳句のような活動には重要性が増す。皆さんのご活躍を期待したい」と挨拶した。 宮川実行委員長も「第1回から引き継がれているこの全伯俳句大会の目的は、伝統俳句、現代俳句などの流派を超えて、共に切磋琢磨しながら親睦を深めるというもの。このような目的を持つ句会というのは、本家日本でもあまり類を見ないと思います。これはまさに調和を重んじる日本人と、懐の深いブラジルという大地の融合の賜物」と大会の意義を述べた。選者として吉田しのぶ、小斎棹子、伊那宏3氏が紹介され、席題「春季一切」と席題テーマ「駅」を発表、投句、選句、披講、成績発表、句評が行われた。 席題部門「特選」の伊那宏選は「老い行けば死もまた身近陽炎える」(小斎棹子)、小斎棹子選は「出稼ぎを出迎ふ駅や春日傘」(吉田しのぶ)、吉田しのぶ選は「発車ベル出逢いと別れ春の駅」(大野一歩)だった。 席題総合得点1位の小斎さん(88歳、北海道出身)に感想を聞くと「会うも別れも移民生活に通じる。日本を出発する際も友と別れた場所は駅で、帰国した際に再会するのも駅。その友も多くは駅に行っても会えない存在になってしまった」という思いが込められているという。2位の中馬さん(75歳、鹿児島県出身)は「初めての参加で賞がもらえて嬉しい。90歳の林とみ代さんから『ぜひ参加を』と言われて出席した。一昨年亡くなった父が第1回大会に参加していたので、縁を感じる」とのこと。3位の大野さん(53歳、大阪府出身)は「ビギナーズラック(初めてする人がつかむ幸運)です。移民の皆さんの想いを想像して書きました。受賞させてもらい嬉しい」と述べた。 兼題部門「特選」では伊那宏選が「偲ぶ事偲ぶ人あり移民の日」(百合由美子)、串間いつえ選が「寒の雨椅子に正座のテレビ前」(鈴木静江)、久保一光選が「ウチナーグチ(言葉)話すバス旅冬ぬくし」(山城みどり)、小斎棹子選が「寒桜一世育てし並木かな」(畠山てるえ)、児玉和代選が「冬の蝶それでも生きる移民妻」(大槻京子)、白石佳和選が「先輩の紡ぐ言葉や冬の句座」(山本郁香)、馬場園かね選が「移住地に大和の色の冬桜」(織田まゆみ)、広瀬芳山選が「母の日や子等の倖せ我が倖せ」(西谷律子)、吉田しのぶ選が「移民の日念腹俳句置き土産」(浅海喜世子)だった。