60歳目前、一田憲子さんが考える“人づき合い”。人生後半戦は「薄くて淡い関係性でもいい」
人生後半戦を迎えると、家庭も仕事も違うフィールドに移る人が多いよう。これまでと違う環境下、人間関係はどう構築していけばいいのでしょうか? 友人との関わり合い方やこれからの考え方について60歳目前、編集者・ライターの一田憲子さんにインタビューしました。 【写真】60歳目前の一田憲子さんにインタビュー
小さな「世話焼き」をきっかけに、人とつながりを持つ
――人生の後半戦、これまでと活動のフィールドが変わり、人間関係にも変化が。どのように人間関係を構築していいか悩んでいる人もいます。 一田さん(以下、一田):私は、これまで仕事ばかりの毎日で、子どももいないからママ友もいないし。私自身、友達がめちゃくちゃ少ないと思うんですよ。でも、この歳になって突然、友達を増やそうとしても、あまり簡単ではないですよね。みなさん、友達にどんなイメージを持ちますか? 絶え間なくおしゃべりをしたり、悩みを打ち明けたり、いつも会ったり。きっと、そういう関係性が友達って思い込みがちですけど、それって無理があるように感じるんです。 だから私は1人にもたれかかるような関係性じゃなく、「こういうときはこの人と会おう」、「この悩みはこの人に相談しよう」とか、小分けにして、必要に応じ求めるみたいな関係でいいんじゃないかなあ、と考えています。細い紐を少しずつ増やしていくイメージですかね。だた、歳をとると、その紐は簡単に増えないから、こっちから行かないと。もう世話焼きおばさんになるしかないんですよ。 ――世話焼きおばさんになる? 一田:取材で知り合った方が、子育て中、周囲に助けてもらえず、外にも出られず、しんどかったときに「知人がご飯をつくって持ってきてくれたことが、すごくうれしかった」と話していたんです。 困っていそうな人に対して「なにかあったら言ってね」って声をかけてくれる人はいるけど、実際困っている渦中にいる人はなかなか声を上げられない。だから、その人の役に立つか、ひょっとしたら迷惑かわからないけれど「困っていそうな人がいたらとりあえず行動を起こしてみる。そうすると、次第に人と人とのつながりは増えていく」という話をしていて、なるほど、と。 ――一田さんは、ご自身いわく、社交性を持ち合わせているけど、自分から行くのは躊躇する「明るく閉じている性格」ですよね? 一田:はい、彼女も私と同じ「明るく閉じている性格」だったんですけど、彼女はその経験から「明るく開く」ようになって、「一田さん、近くにいるんだけど、よかったら遊びに行っていいですか?」と連絡をくれるようになったんです。私はそれがうれしくて。声をかけてもらえることは、じつはうれしいことなんだと、今度は私が彼女から教えてもらった感じです。それからは私も自分から行動するようになりました。 だから、最初から密な関係性を求めるのではなく、例えば外出先で買ったお土産をおすそ分けするとか、そんな小さな「世話焼き」をきっかけにして、少しずつ関係性をつくっていくのもいいんじゃないのかな、と思うのです。