にぎわう野鳥撮影「遠くから静かに」マナーにも気遣い
野鳥の子育てが始まっているこの時季、全国各地の野鳥の営巣地にアマチュアカメラマンが駆けつけてベストショットを競っています。高性能のレンズやカメラの登場で野鳥撮影ファンは拡大。車で数百キロを移動しながらの本格派もいるようです。その一方で、「野鳥を刺激しないよう撮影マナーを厳守して」との呼びかけも強まっており、カメラマンたちは「遠くから静かに」と気を使いながら腰を据えています。 【動画】コハクチョウが北帰行 長野県の犀川白鳥湖
決定的瞬間は1日に数回あるかないか
長野県北部の都市近辺を流れる川添いにズラリ並んだ三脚。高性能の大型望遠レンズを装着したカメラが、そろえたように据え付けてあります。時折カメラをのぞきながらシャッターを押すアマカメラマン。機材を積んだ車のナンバーは関東圏や県内の別の都市などが占め、地元勢はわずか。
レンズが狙うのは、川を隔てて数十メートル先の崖に小さく見えるハヤブサの巣。4月中旬の抱卵から何回もここを訪れているという県内の中年の男性は「卵は3つらしいが、すでにかえっているはず」と何度もカメラをのぞきます。「これを見てください」と見せられた画像はこれまでに撮影した巣の様子。大型望遠レンズの拡大パワーで、目の前の手のひらの上にいるかのように親鳥がシャープに写っています。 親鳥が餌をくわえて戻ってくると、カメラは一斉に巣に焦点を合わせ、親鳥が巣に入る瞬間などを狙います。決定的瞬間は1日に数回あるかないか。その間、アマカメラマンたちはじっと立ち続けたり、機材の点検などで時をすごします。忍耐が必須の撮影です。
「野鳥は神経質」配慮が必要
NPO法人戸隠森林植物園ボランティアの会の理事で自然観察インストラクターの羽田収さん(78)=長野市=によると、ハヤブサは翼の先端がとがっているのが特徴。子育て中に雄が餌を求めて飛び回り、幼鳥は7、8月までに巣立ちます。 羽田さんは毎月10日ほど長野市内の一定地域でスズメ、ハト、キビタキなど数十種類の鳥の個体数の確認調査を行い、繊細な環境の変化を知るための地道なウオッチングを続けています。それだけに野鳥への人間の向き合い方にも厳しい目を注ぎます。 以前、長野県北部の山岳地に真っ赤なくちばしのアカショウビンが飛来したときは、「あっという間に全国から連日100人以上のカメラマンが殺到し、森の中が大騒ぎになった。カメラマンが殺到しないよう一部を交通止めをしたりして大変だった」と羽田さん。野鳥の観察には理解を示すものの、過熱気味の撮影に対しては「野鳥は神経質。騒ぎにしない配慮が必要です」と指摘します。