未来のクルマという言葉はテスラのためにあるのかもしれない。2019年に発売されたモデル3は、運転に関する操作のほぼすべてを15インチのタッチパネルで行い、スタートボタンやシフトレバーは見当たらない。ファームウェアのアップデートで、常に最新の機能を維持できるのも魅力のひとつ。発売から5年を迎え、ソフトでは変更できない外観のブラッシュアップや次世代ドライブユニットを搭載、進化したモデル3に試乗した。 【写真】デザインなどがバージョンアップされたテスラのモデル3。控えめな外観だが、スポーツカー顔負けの強烈な加速力を持つ テスラはバッテリーEVの専門メーカーで2003年にアメリカで産声をあげた。当初は赤字続きだったが、地球温暖化など環境対策の必要性から、徐々に売り上げを伸ばす。19年以降、価格を抑えたモデル3とモデルYを発売、黒字に転じる。21年には時価総額が1兆ドルに達し、トヨタを超え世界一に輝く。 モデルYは昨年115万台を売り上げ、トヨタ・カローラを抜いて世界でもっとも売れたクルマとなった。 今回、お借りしたのはモデル3の最上位グレードとなるパフォーマンス。前後に独立したモーターを持つ4WDで、最高出力は460馬力に達する。 見た目は普通のセダンに見えるが、スタートから3・1秒で時速100キロに達し、最高速度261キロと、ポルシェなどと肩を並べる性能を持つ。価格は約726万円と高価だが65万円の補助金などがあるので、コストパフォーマンスは高い。 車内のシンプルさは想像以上で、ステアリングがあるのでクルマと分かるほど。スタートボタンすらなくブレーキを踏むとスイッチが入る。 事前に広報の方からレクチャーを受けたのだが、それでも操作の一通りを確認するのに10分ほどかけた。 ディスプレーに表示されるシフトをドライブに入れてスタート。わずかにタイヤの音が聞こえるが静粛な室内が心地いい。酷暑のなか、エアコンの風音が一番気になるかもしれない。 8個のカメラが撮影した映像をコンピューターが処理してディスプレーに映し出す。クルマはもちろん、歩行者やオートバイなどを個別に認識して表示する技術に驚かされる。 パフォーマンスの真価を試そうと高速道路のゲートを抜けてアクセルを踏み込む。わずかなモーター音とともに体がシートに押し付けられ奥歯を嚙（か）みしめた。3秒で制限速度に達するはずだが、エンジン音のない車内はスピード感がわからず、景色だけが後方にすっ飛んでいく。