土石流に襲われた街で神輿復活 頼朝が源氏再興を祈願した神社の祭りで被災者も笑顔 静岡
土石流に襲われ28人が犠牲になった静岡県熱海市の伊豆山地区で神輿が復活した。土石流の前からコロナ禍で中止となっていたため5年ぶりの復活だ。伊豆に配流となっていた源頼朝が源氏再興を祈願したとされる神社の例大祭は復興途上の被災者たちの励みとなった。 【動画】土石流で28人犠牲の街に神輿復活 住民の大半は戻らず「祭りの時だけでも来て」
132世帯のうち111世帯が戻らず
神輿の掛け声に包まれた熱海市の伊豆山神社の例大祭。 3つの町内会の神輿がそろって参道を下るのは新型コロナや土石流災害の影響で実に5年ぶりだ。
2021年7月3日。大規模な土石流が熱海市伊豆山地区を流れ下った。災害関連死も含めて死者は28人。住宅など136棟が被害を受けた。 毎年恒例の伊豆山神社の例大祭は、地域の人たちが復興・復旧を願う祭りとなっている。
2023年9月の警戒区域の解除に伴い、819日ぶりに自宅に戻った小松昭一さんにとっても例大祭は忘れられない地域の思い出だ。 小松さんは「お祭りと言うと伊豆山神社の祭りだから、私たちも若い時からお祭りに参加して、笛を吹いて神輿と一緒に歩いた記憶がありますから、懐かしいね」と話す。
伊豆山地区では土石流で避難した132世帯227人のうち、21世帯45人が自宅や警戒区 域内への帰還を果たし、新たな生活を始めている(2024年5月時点)。たった2割にも満たない。 伊豆山地区から離れて生活再建にこぎつけたのが76世帯113人で、残りの35世帯69人 は今もアパートなどの“みなし仮設住宅”で避難生活を続けている。
5年ぶりの神輿に笑顔
小澤昭治さんは伊豆山地区に戻った21世帯45人のうちの1人だ。 例大祭では長年にわたり神様に奉納する子供たちの舞「神女舞(しんにょまい)」の指導を続けてきた。
伊豆山神社は伊豆に配流となった源頼朝が源氏の再興を祈願したと伝えられている。 例大祭では実朝の舞や神女舞が奉納され、神輿と並ぶ見どころの1つ。 軽快なお囃子に乗せて舞う子供たちを見て、指導する小澤さんも「安心しました」と満足気な様子だ。