立民・安住淳氏が予算委員長に…自民と〝緊縮大連合〟の布石か 国民をないがしろ立民が予算の「キャスチングボート」握る悪夢
【ニュース裏表 田中秀臣】 石破茂政権は衆院選で自滅し、少数与党に転落した。7日に開催された自民党の両院議員懇談会では、報道によれば石破総裁への退任要求を口にした議員は1人だけだったという。綱渡り的な国会運営がやがて行き詰まり、遅かれ早かれ辞任するはめに陥るのを見越して、いまは静観しているのかもしれない。 【写真】「もっと下に…下に」“半ケツ”状態でビラ配りをするボランティア女性 ただし石破政権自体は延命に必死である。衆議院の予算委員長のポストを立憲民主党に譲る方針を打ち出し、立民側も安住淳元財務相を委員長に充てることにした。予算委員会は国会会期中、最も世間の注目が集まる舞台である。もちろん国の予算を議論し、成立させることは国会の最重要の役割であり、きわめて異例の人事だ。 金子洋一元参院議員(日本維新の会)はX(旧ツイッター)で、野党にも予算審議の責任を負わせることになるとして、その戦略的意義を指摘した。ただし日本のマスコミは、単純な善悪二元論が大好きである。与野党が責任を持って予算を審議することを伝えるより、荒れた委員会を外野から煽ることだろう。野党も「政治とカネ」という相変わらずのワイドショー的テーマで予算委員会を振り回し、世論の関心を得ることを目指すのではないか。 予算委員長になる安住氏は、バリバリの緊縮財政派だ。また立憲民主党は独自の補正予算案を提出する構えだというが、その規模はわずか7兆4000億円だ。日本経済が安定的にインフレ目標2%を達成するには、PwCコンサルティングの片岡剛士チーフエコノミストや会田卓司クレディ・アグリコル証券チーフエコノミストらが指摘するように、25兆円から30兆円の財政政策が必要だ。 緊縮財政の立憲民主党が予算のキャスチングボートを握ることは悪夢だ。ただ高橋洋一嘉悦大学教授が指摘するように、立憲民主党と石破自民党との大連合の可能性もある。もしそのシナリオがあるとしたら、この予算委員長人事は、国民をないがしろにした緊縮大連合の布石かもしれない。要警戒だ。 また石破政権の延命が、国民民主党の経済対策をどれだけのむかにかかっていることは間違いない。所得税の控除を103万円から178万円に引き上げることや、消費税減税などは大賛成だ。所得税控除は恒常的な本予算での措置にすべきだが、今年度は先行して補正予算で対応してもいい。
消費税減税など国民民主党の経済対策の規模は20兆円超ほどだ。能登半島の震災復興費など立憲民主党の目玉政策も丸のみして、規模感のある経済対策を打ち出すべきだ。もし国民民主党の提案も拒否し、あるいは積極財政政策もしないなら、石破政権は単なる国民のお荷物である。 (上武大学教授 田中秀臣)