半導体のラピダスはこのままでは99.7%失敗する
しかし、政府はだめだ、というだけでは前に進めない。 ■政府主導のプロジェクトが勝っていた4つの理由 逆に考えてみよう。21世紀ではだめなのに、20世紀までは、政府主導のプロジェクトが民間企業に勝てることがあったのは、なぜだろうか。可能性は4つある。 第1に、民間よりも政府のほうに優れた人材がいること。民間企業には見えない大局や未来が見えて、かつそれを実行する実力がある人材が政府に集まっている、あるいは政府が集められること。
第2に、民間にはとれない大きなリスクが、政府ならとれること。同様に、第3に、民間では調達できない多額の資金を投入できること。そして、第4に、国家と民間では、タイムスパンが違う。国家は、まれに超長期的なヴィジョンで行動できるからだ。国家百年の計、というやつである。 21世紀に、これらの第1から第3の理由が成立しなくなったことは明白である。第2と第3は、誰も反論しないだろう。 もし儲かる見込みが立てば、4兆円ぐらいすぐに集まる。そもそも、アメリカの「マグニフィセントセブン」などでみると、エヌビディアの時価総額だけで約550兆円の規模があり、10兆円程度など、有望なプロジェクトならば、どうにでもなるし、リスクだってとれる。そして、21世紀の政府は、リスクはまったく取れなくなった。リスクをとった場合は、アリバイ作りばかりしている。絶望的だ。
第1の理由も、残念ながら明白だ。人材は民間に集まる。日本の伝統的大企業でも危ういのに、政府に集まることは絶望的だ。 最後の望みは、大局や未来が見える人材は、民間企業とは別のところにいて、政府のアドバイザーになるということかもしれない。しかし、こんな夢をいまだに抱いているのは、過ぎ去った20世紀に住み続けている人々だけだ。そのような古きよき時代は終わった。 さらに、いかに優れていても、そして、その人が万一、政府に加わったとしても、スピード感と行動パターンの違う政府の活動に巻き込まれた瞬間から、民間人としての能力は劣化していく。例えば、アメリカのテスラのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏が、これまでどんなに優れていたとしても、余計な活動と意欲が生まれてきた現在、トランプ次期政権にかかわることで、さらに劣化していくだろう。