《大統領選後を予測する》もしトランプ氏が勝利したら…米国の利益を最大化、孤立主義で世界秩序は戦前に回帰?
■ 輸入品に一律20%課税? 国際協調と自由貿易が崩壊か 今回の選挙でトランプ氏が力点を置くのは経済政策です。米国の各種世論調査を見ても、経済政策ではハリス氏よりトランプ氏への期待が上回っています。 トランプ氏は選挙戦で「ユニバーサル・ベースライン関税」の導入を提唱しました。世界各国からの輸入品に一律10%の関税を課するというものですが、選挙戦が進むにつれ、税率を20%に引き上げると言い始めました。これもまた「アメリカ・ファースト」の現れであり、輸入品の攻勢から米国の企業を守るという「保護主義」政策です。 中国に対しては60%以上の関税を課すとしており、電子部品や鉄鋼、医薬品などが標的になると見られています。特にメキシコ経由で米国に入ってくる中国車には100%を課すと訴えました。 しかし、専門家の間では、高関税は外国から輸入する原料や製品の価格上昇を招き、米国内の物価高騰につながって消費者を直撃する懸念が指摘されています。また中国も米国に高関税で対抗するのは必至。「貿易戦争」に発展した場合には、米国の輸出企業にとっても悪影響が予想されます。 米国はかつてこうした政策をとったことがあります。1929年の世界恐慌後のことです。当時は新たに関税法を制定して国内産業の保護を狙いましたが、各国も高関税で応じ、かえって恐慌を拡大させました。当時、米国は欧州やアジアの紛争から距離を置く「孤立主義」をとった時期でもあります。 トランプ氏が大統領に就任すれば、国際協調と自由貿易を基調とする第2次世界大戦後の世界秩序が崩壊し、戦前に回帰すると心配する声が出ています。
■ 石油・ガスを「掘って掘って掘りまくれ」 今回の大統領選では、移民問題も大きなテーマでした。 米国には約1100万人の不法移民がいるとされます。トランプ氏は不法移民対策として、毎年100万人以上の不法移民を本国に送還するとしています。これも経済への影響が懸念されています。 不法移民であっても米国経済を支える労働力となっているのが現実です。これだけ多くの人々を国外に追放することになれば、生産の現場では人手不足を招くことが避けられません。労働力不足が人件費高騰を招き、物価上昇につながるという構図が現実のものになりかねません。 このほか、環境に配慮した経済活動への制約を取り払おうとするのもトランプ氏の特徴で、こうした制約を設けている州には規制緩和を促す方針です。石油や天然ガスなどの化石燃料の利用にも積極的で、「掘って掘って掘りまくれ」と増産を促しています。 経済活動を制限する要素は可能な限り取り除くという姿勢が強くにじんでいます。