創業家から追放され2年、星野リゾート社長の「ギリギリ」の復帰/「中小企業の事業承継は、日本経済のカギを握っている」 ~代表 星野佳路氏インタビュー後編
創業家一族の公私混同をきちんと正さないといけない。30年以上前、リゾートホテルを全国展開する星野リゾート(長野県軽井沢町)の代表 星野佳路氏(63)は、身内の創業家一族に提言したところ、会社から追放された。しかし、その後に父子の対立を越えて会社を承継し、成功をおさめた。「中小企業の事業承継には、低迷する日本経済の成長を左右するポテンシャルがある」と語る星野氏に、当時の経緯や舞台裏、そして事業承継の新しいあり方を聞いた。 【動画】星野代表が今後の事業承継の可能性に迫る
◆父と対立、勝敗はギリギリだった
「辞めさせられた当初は『もう戻ってこない』と思っていました。 僕が辞めた後、21人いた株主たちも様々なことを考えたようです。 結果的には、社外の同族株主たちの後押しによって復帰することになりました」 星野氏が辞めさせられたことで、同族間に社内の問題が広く知れ渡った。 社外の同族株主たちの注目が集まり、星野氏を復帰させようという機運が作られた。 追放から2年の月日が流れていた。 復帰も、すんなり進んだわけではない。 「社長職への就任と役員の交代を要求しましたが、賛成してくれたのは50数%と、ギリギリの勝利でしたよ。 しかも3代目である父はあちら側(反対)ですからね。 採決されたとき、父は立ち上がって『お世話になりました』と言って出ていきました」 本来なら同じ方向性に向かって歩んでいくはずの、父と子のすさまじい対立。 ただ、その後、星野氏は「実権は新しい経営陣が握っているとはいえ、長く経営してきた父を離反させても仕方ない」と、1年かけて先代を会長職に就任させ、雪解けにこぎ着けた。
◆同族企業の事業承継、大切なのは親子間の合意
幼いころから「うちの4代目です」と紹介されてきた星野氏。 彼は、これからファミリービジネスを承継する人に向けて、親子間の「合意」が重要だと語る。 「日本のファミリービジネスでは『継いでほしいと思っている』や『継ぎたいと思っている』という話をしないまま、親が歳を重ねていくケースが多すぎるのではないでしょうか。 意思を伝え合わなかったために、『親父はもう80歳、子どもの自分は50歳になったけれど、まだ継がせてもらっていない。将来的に私が継ぐことになるのか、それとも廃業するのか……』と、継ぐ側が不安になってしまうケースがたくさんあります。」 親子とはいえ、あうんの呼吸で会社の将来を決めることは難しい。 幼いころから「ゆくゆくは継いでもらいたい」と伝え、先代の背中を見せながら、会社の理念やビジョンを折に触れて伝えることが望ましいという。