がん細胞を狙い撃ち、手術なしで根治を目指す―山形大学医学部東日本重粒子センター:観光資源×医療ツーリズムで地方創生
がん治療と温泉と美食の合わせ技で
同センターは、医療渡航者の受け入れに適した病院として、政府から「ジャパンインターナショナルホスピタルズ」の推奨を受けている。受け入れ拡大に向け、医療コーディネート事業者数社との契約を進め、さらに、センター内に専門部署を設けることも検討していると岩井センター長は意気込む。 「センターの設立にあたっては、国や地元自治体、地元企業から資金を援助していただきました。旅行業や宿泊業の方々からも多大な寄付が集まったのは、当センターを通じた医療インバウンドの拡大を見込んでのことだと思うので、これからその期待に応えていきたい」 東京駅から山形新幹線で3時間弱。山形県には豊かな観光資源がある。130カ所を超える温泉・名湯があり、蔵王の樹氷原や最上川流域に広がる自然豊かな絶景、米沢牛、さくらんぼ、日本酒などの美味・美食─そうした観光地としての魅力と、東日本重粒子センターの医療サービスを掛け合わせた医療ツーリズムの商品の開発が進んでいる。 2023年3月には県内の大手旅行会社である山新観光が先陣を切り、同センターでの治療を希望する外国人を対象としたオーダーメイド型のツアー商品を発表した。宿泊や航空機チケットを手配し、滞在ビザの取得までサポートするという。 観光を楽しみながら治療が受けられるこのツアーは、地域活性化のために県や市、関連団体や企業が連携して開発した。街を思う人々の力が集結したこの取り組みは、県の医療インバウンドを推進していくのではないだろうか。今後、地方創生につながることが期待される。 取材・文:杉原由花、POWER NEWS編集部 撮影 : 伊藤美香子