障害者や認知症の高齢者らの投票を支える環境づくりが徐々に広がり、今回の衆院選で障害者らが希望する対応を書いて示す「投票支援カード」を導入する自治体もある。一方、投票所の係員が代筆できる「代理投票」制度の周知などが不十分な地域もあり、取り組みに差が出ている。（池園昌隆）

　長崎市障害福祉センターに設けられた期日前投票所。23日、障害者らが次々と訪れ、「投票用紙に代わりに書いてほしい」「候補者名を読んでほしい」といった項目にチェックを入れた投票支援カードを係員に手渡して支援を求めた。

　カードは市選挙管理委員会が今回から導入。投票所内の案内を依頼したダウン症の川口友梨さん（35）は「カードでちゃんと助けてほしいことを伝えられたのでスムーズに投票できた」と笑顔を見せた。

　市選管は障害のある人が投票する際の課題などを探るため、当事者による模擬投票を昨年2月と今年2月に実施。「投票所で意思表示するのが難しい人もいる」との意見が相次ぎ、カードを取り入れることにした。

　同様のカードを7月の東京都知事選から導入した品川区は今回、入場整理券にカードを同封し、周知を図った。知的障害者の保護者らでつくる「浜松市浜松手をつなぐ育成会」は静岡7、8区の全候補者8人の協力を得て、「やさしい日本語」で書いた公約をSNSで紹介。高橋久美子副会長（63）は「候補者側から誰にでも分かりやすい情報発信をしてもらう動きが広がっていけばありがたい」と話す。

　身体障害者らが対象だった代理投票は2013年の公職選挙法改正で、知的障害・精神障害者も認められるようになった。一方で、こうした支援の情報が行き届いていない実態もある。

　22年の参院選を巡り、総務省沖縄行政評価事務所（那覇市）に「意思を伝えることがうまくできない有権者が家族の補助は認められないと言われ、投票をあきらめた」「どのような支援が受けられるのか具体的な情報提供がない」との相談が寄せられた。