“真実”はテレビ局で作られる…「調査開始前にすでに犯人は決まっていた」元職員が語る露テレビ局の「捏造」の瞬間
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第27回 『「娘を助けて」…愛娘が元夫に監禁された! 解放を懇願するロシア人母親を襲った「さらなる絶望」』より続く
空港泊の悪夢
町は人であふれ返っていた。ウクライナからの難民と、プーチンから逃げ出してきたロシア人がたくさんいた。安宿には空きがまったくなかった。 クレジットカードを使わずにホテルを予約しようとしてみたが、ダメだった。わたしのカードは制裁によって、ロシアの国外では役に立たなかった。制裁は戦争を止めるのにきわめて有効な手段だということを、わたしは理解した。その夜は空港で寝ることにした。 空いているベンチに座り、頭をスーツケースにもたせかけ、眠ろうとした。悪い夢を見た。 マレーシア航空MH17便(2014年7月17日、オランダ・アムステルダム発でウクライナ東部の上空を飛行中だったマレーシア航空17便が撃墜され、乗員乗客298人が死亡した事件)、ボーイング機の夢を見た。 飛行機の残骸の中を歩くオーストラリアの家族。夫婦は一人娘を捜していた。娘は火星に飛んで、生活をより良いものにしたかった、と夫婦は話していた。