ロシアで「子どもを持たない主義」宣伝禁止へ、出生率向上が狙い 効果を疑問視する声も
ロシア下院議会は12日、「子どもを持たない主義」の悪質な宣伝とみなされるものを禁止する法案を全会一致で可決した。低迷する出生率を上げる狙いがある。 9月の公式統計では、2024年上半期の出生率が四半世紀ぶりの水準に低下。ロシア政府はこの数字について「国の将来にとって破滅的」だと述べた。 新法案が成立した場合、「子どもを持たない主義」を推進する個人には、最高500万ルーブル(約790万円)の罰金が科される。 ただ一部では、政府の取り締まりが的外れだと指摘する声も。 アリーナ・ルザノバさん(33)は、出生率低下の背景には経済的不安があると語る。 「『子どもを持たない主義』を禁止しても、あまり効果はないだろう。子どもを欲しいと思わない、女性が産まないことは、誰かの指示ではない。子どもを欲しいと思っていても、お金がない。それが理由だ。どこかの誰かが何かを書いたからではない」 ヤナさん(40)も同じ意見だ。デリケートな問題であるとして、姓を明かさずに取材に応じた。 「人々は将来に自信を持つことができれば、子どもを持つことを選択するだろう。ただ、住宅ローン金利が年間20%に到達するようでは、好ましい時期とは言えない」 ヤナさんは、禁止措置よりも政治的・経済的安定が効果を生むだろうと指摘する。 「政治情勢の安定が必要だ。この国で生活したいと思える条件が求められる。そうすれば、近年ロシアを去った人々も戻りたいと思えるかもしれない」 法案には表現の自由に対する新たな制限も。同国ではすでに、同性同士の交際にかかわる内容など「非伝統的なライフスタイル」の推進とみなされるコンテンツが禁止されている。 ロシアの人口統計は、厳しい現状に直面している。2024年上半期の出生数は60万未満で、2023年の同時期より1万6000人減少し、1999年以来の低水準となった。 プーチン大統領は、女性に少なくとも3人の子どもを持つことを奨励している。 上院とプーチン大統領も、同法案を速やかに承認する見通し。