刑の一部猶予制度始まる 薬物依存の再発防止へダルク代表「つながり大事」
長期のフォローも必要、受け皿が足りない?
「薬物依存の保護対象者が2・5倍に!?『刑の一部執行猶予制度』開始で」――。今年1月下旬、こうした見出しの産経新聞の記事を、関係者らは不安と驚きをもって受け止めたいう。 薬物事件による保護観察対象者は毎年約4000人を数え、産経が報じた「2.5倍」の1万人という数字は法務省幹部の推計とされる。現状でも支援体制の不十分さが問題となる中、観察対象者が1万人に達した場合、保護観察所などの負担が限界を超える可能性は高い。 覚せい剤事件で有罪確定したASUKA氏が保釈後に、同じく清原和博氏が逮捕前に一時通院したとされる薬物依存治療の専門医療機関にしても、国内でわずか数十か所にとどまるという。 受け皿として、保護観察所と民間支援組織との連携はより重要となり、ダルクなどの役割は今まで以上に重さを増す。 「うち(ダルク)に来るかどうか、強制力はないから何ともいえないけど、薬物依存は生涯の『病気』なんですよ。それを理解する観察官らは自分たちの手を離れた後のことを考えてうちに連れてくるよね。家族、保護観察所、医療機関、民間施設を橋渡しするネットワークができればいいんだ。とにかく依存者を孤立させないこと、一人にさせないこと。先は長く、一生を通じてのことなんだから橋渡しづくりは大事なこと」と近藤代表は強調する。 ダルクでは10年、20年はもちろん、30年以上にわたってフォローアップしている依存者もいるという。 薬物依存者の受け入れを拒む民間更生保護施設が多い中、新たな施設づくりについても近藤代表は明快だ。「私は自力で各地に施設を作ってきたけど、設置前は周辺住民に知らせなかった。設置後にはさまざまな苦情が来たけど、社会に必要な施設だという思いは強かった。そうして一つひとつつくってきた。大事件なんて30年間で一度もないし、十分な配慮はしつつも社会に必要な場所なんだと思っている」 緒についてばかりの刑の一部執行猶予制度をめぐっては、早期出所した受刑者による再犯が頻発すれば制度そのものが問題視される可能性も少なくない。「率直に言えば、制度を適用されたうちの5割近くは再犯するでしょう」と話す近藤代表。「それを防ぐためにも家族と官民を合わせた綿密なネットワークづくりは早急に取り組むべき課題。家族の支えや、同じ苦しみを持つ仲間たちと一生つながっていなければ、いつ再発してもおかしくない『病気』なんですから」と理解を呼びかけた。