臨時国会がスタート 地方創生担当大臣でちょっと気になること 秋山訓子
国会も始まり、第二次安倍改造内閣の本格スタートです。この内閣の特色の一つが、地方創生担当大臣を置いたこと。新設の大臣です。なぜでしょうか。政策的な面と、政局的な面から説明すると…… 地方の疲弊は言うまでもないでしょう。アベノミクスで株価は上がり、景気は好調になりましたがその効果が地方まで行き渡っているかというと大いに疑問です。少子高齢化による人口減少は深刻で、元総務相の増田寛也氏らは5月、896の自治体が2040年までに消滅する可能性があると試算、公表して衝撃を呼びました。地方をどう活性化するかは深刻な課題です。 加えて、来年には統一地方選があります。特定秘密保護法の成立や集団的自衛権の行使容認の閣議決定で、安倍政権の支持率は息切れ気味(閣僚への女性5人起用で持ち直してはいますが)。その統一地方選勝利に向けて、この「地方創生」は大きな目玉になるというもくろみが安倍首相にはあります。 統一地方選で勝てば、その先の来秋に控える自民党総裁選での安倍さん再選に向けて大きなステップになります。そこで再選、さらには長期政権へ……というシナリオを描いているわけです。 さらに、大臣に石破茂さんを起用したのもポイントです。首相をめざす石破さんは安倍さんの最大のライバル。その石破さんを内閣に封じ込めてライバルとしての動きをとめてしまおうというもくろみもあります。
とはいえ、ここにはいくつか注意すべき点が。 まず、他の多くの大臣と違って、地方創生には特に本拠地となる省庁はありません。先日、司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」が誕生しましたが、職員は各省庁からの寄り合い部隊。省庁の縦割りを超えて、実効性のある働きができるのかは、はっきりいって未知数。 また、「予算ばらまき警報」も出ています。2015年度予算編成に向けての概算要求では、ここぞとばかりに「地方」と名付けたものがたくさん。これって地方創生?って思ってしまうものも。はっきりいってバブルかも。 何かを思い出しませんか? そう、震災復興予算の流用です。こじつけ予算がオンパレードになって大問題になりました。そんなことはないとは思いますが、しかし要注意。石破さんは「ばらまきはやらない」と明言しています。 そんなわけで、短期的ではなくて、日本の長期ビジョンを描いたうえでの地方創生策ができるのか。そういえば似た名前のふるさと創生、ってのがその昔の1989年、竹下内閣時代にありましたね。全市町村に1億円配った事業。まさにバブル時代を象徴するものでしたが、そんなふうにならないようにね。 ---------------- 秋山訓子(あきやま・のりこ) 朝日新聞政治部次長。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に「ゆっくりやさしく社会を変える」